2024年の人事・労務関連法改正、変更事項をおさらい!これからでもできる対応と気を付けるべきポイントを解説

更新日:2024/12/27

就業規則

2024年は、人事・労務関連の法改正が多い年となりました。すべての改正が自社に関連するとは限りませんが、自社で対応すべき事項に漏れがないか今一度確認した上で、対応が遅れているものについては早急に対応が必要です。 ぜひ最後までお読みいただき、2024年の法改正にしっかりと対応していきましょう。

2024年の人事・労務関連の法改正、変更点

すでに施行済みのものが多いですが、今一度おさらいした上で、対応が遅れているものについては冒頭でお伝えしたとおり早急な対応が必要です。

1.時間外労働の条件規制適用猶予期間終了(4月施行済み)

2019年4月に、それまで実質青天井であった時間外労働に上限が設けられました。
上限規制の内容は次のとおりです。

①特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外労働は年960時間を上限とする
②時間外労働と休日労働の合計について、「月100時間未満」かつ「2~6か月平均80時間以内」とする
③時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月までとする

特別条項付き36協定を含め、労働時間の上限規制についてはこちらで詳しく解説していますので、併せてお読みください。

≫特別条項付き36協定とは?残業時間の上限と超えた場合のリスクについて解説

なお、施行当初は大企業のみが規制の対象となり、中小企業には1年間、建設事業・自転車運転業務については5年間の適用猶予期間が設けられました。
適用猶予期間中、建設事業においては災害の復旧・復興以外の事業に限って上記②の規制のみ適用が猶予されていたにとどまり、一般の建設事業においては当初から一般の事業と同様の規制が適用されていました。
一方で自動車運転業務においては上記②、③の規制の適用が猶予されていたため、年間の時間外労働時間が上限の960時間の枠内であれば柔軟な時間外労働のコントロールが認められていましたが、2024年4月より一般の事業と同様の規制が適用されることとなりました。
これにより、主に運送事業を営む事業者は雇用する労働者の働き方を抜本的な見直さざるを得ない大きな課題に直面しています。2024年問題としてメディアでも報じられたほか、適用猶予期間終了を見据えた発送料金の値上げや、ネットショッピングの配達日数の長期化は印象に残っている方も多いのではないでしょうか。
自動車運転事業者はもちろん、会社の経費にも大きく関わる内容ですので、労務担当者としてもぜひこの改正について押さえておきましょう。

2.労働条件の絶対的明示事項の追加(4月施行済み)

労働者を雇い入れる際に交わす雇用契約書等労働条件明示書面について、法改労働契約法により次の事項が追加されました。

①無期転換に関する事項

  • 更新上限(通算年数・更新回数)

  • 無期転換申込機会

  • 無期転換申込権の発生・行使のタイミング


②就業の場所及び従業すべき業務の変更の範囲
このたび新たに追加された事項を含め、労働条件の明示事項についてはこちらで詳しく解説していますので、併せてお読みください。

≫労働契約で明示が必要な項目は?絶対的記載事項と相対的明示事項の違いは?最新の労働条件明示事項について解説

2024年4月以降の雇い入れ、もしくは契約更新には上記の改正法の内容が適用されていますので、対象となる労働者の雇用契約書などを今一度確認し、対応が不十分な場合は労働者に十分に説明の上、早急に要件を満たす雇用契約書などの取り交わしを進めましょう。

3.障害者雇用率の引き上げ

2024年3月までの一般企業における障害者雇用率は2.3%で、雇用する労働者45.5人につき1人の障害者雇用が求められてきました。
この障害者雇用率が2024年4月より2.5%へ引き上げられ、障害者雇用が義務付けられる雇用労働者人数が40人となりました。
また、2026年7月には2.7%へ引き上げられることが決定しており、2028年4月以降は新たな障害者雇用率を定めることとされています。
上記に加え、障害者雇用率を計算する際の障害者数のカウント方法も変更になっています。
これまで重度精神障害者について、週の所定労働時間が20時間未満の場合はカウントの対象外でしたが、2024年4月より重度身体障害者・重度知的障害者同様に0.5人にカウントできることとなりました。
これらのことから分かるとおり、障害者雇用が義務付けられる事業規模が次第に小さくなってきています。そのため、2024年4月より対象事業者となった、もしくは今後対象事業者となることが見込まれる場合には、早急に障害者雇用について検討する必要があります。
障害者雇用を検討する際、まずは次の内容の確認と検討から始めるのがおすすめです。

  • 事業場のバリアフリー対応状況

  • テレワークを前提とした業務の洗い出し

  • 単純作業、実施が容易な業務の洗い出し


上記同様、在宅で実施できる業務および環境があれば、事業場への出勤や事業場での言語コミュニケーションが困難な求職者の雇い入れをより前向きに検討できます。

4.専門業務型裁量労働制についての事項追加(4月施行済み)

特定の専門職従業員に専門業務型裁量労働制を適用する場合に、次の3つの事項が新たに追加されています。

①対象業務の追加
今回新たに「銀行又は証券会社における顧客の合併および買収に関する調査又は分析およびこれに基づく合併および買収に関する考案および助言の業務」が追加され、計20の職種が専門業務型裁量労働時間制の対象業務となりました。いわゆる証券アナリストがこれに該当します。

②導入時に労働者の個別の同意、同意記録の保存
専門業務型裁量労働時間制を採用するための要件に、新たに次の3つが追加されました。

  • 制度の適用に当たって労働者本人の同意を得なければならないこと

  • 制度の適用に労働者が同意しなかった場合に不利益な取扱いをしてはならないこと

  • 制度の適用に関する同意の撤回の手続


これら3つの要件が追加されたことにより、これらの同意の記録について、これまでも3年間の記録保存が必要であった、

  • 労働時間の状況、健康・福祉確保措置の実施状況

  • 苦情処理措置の実施状況


と同様に記録の保存が必要になりました。

③健康・福祉確保措置の強化
企画業務型裁量労働時間制と同様に、労働者の健康・福祉確保のための措置が必要となり、次の1・2からそれぞれ1つずつ実施することが望ましいと明文化されました。

【1:長時間労働の抑制や休日確保を図るための事業場の適用労働者全員を対象とする措置】
① 終業から始業までの一定時間以上の休息時間の確保(勤務間インターバル)
② 深夜業(22時~5時)の回数を1箇月で一定回数以内とする
③ 労働時間が一定時間を超えた場合の制度適用解除
④ 連続した年次有給休暇の取得

【2:勤務状況や健康状態の改善を図るための個々の適用労働者の状況に応じて講ずる措置】
⑤ 医師による面接指導
⑥ 代償休日・特別な休暇付与
⑦ 健康診断の実施
⑧ 心とからだの相談窓口の設置
⑨ 必要に応じた配置転換
⑩ 産業医等による助言・指導や保健指導

(引用)専門業務型裁量労働制について|厚生労働省

5.社会保険の適用拡大(10月施行済み)

2016年10月に初めて導入された短時間労働者への社会保険の適用拡大ですが、2022年10月より事業所の人数規模がそれまでの501人以上から101人以上に変更されました。
上記事業所の人数規模について、今回の改正により51人以上に変更されています。
今回新たに対象となる会社においては、そのほかの要件についても今一度確認が必要です。

対象となる労働者の条件



  • 週の所定労働時間が20時間以上であること

  • 残業代を除く月の収入が88,000円以上(年間106万円以上)

  • 2か月以上の雇用継続が見込まれること

  • 学生でないこと


所定労働時間を変更せず社会保険に加入する場合、給与から総支給ベースで約15パーセントの社会保険料が控除され、新たに社会保険に加入するパートタイム労働者の手取りが大きく減少することになります。
そのため、会社としては改めて必要な人員・稼働時間数を精査の上、社会保険の加入を希望する労働者には所定労働時間の延長を、社会保険の加入を希望しない労働者には所定労働時間の短縮について、それぞれ十分に説明して社会保険加入漏れのないようにしなければなりません。
なお、このたびの短時間労働者への社会保険適用拡大に伴い、今回新たに社会保険に加入するパートタイム労働者がいる場合、厚生労働省のキャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)を活用できる可能性がありますので、併せて検討することをおすすめします。

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)の概要


新たに社会保険の加入が必要となる短時間労働者について、①社会保険料に相当する金額の賃金アップ、②所定労働時間の延長のいずれか、もしくは双方の措置を講じることで、労働者1人あたり最大50万円が支給されます。
(参照)キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)|厚生労働省

6.健康保険被保険者証(保険証)の廃止(12月実施済み)

2024年12月2日より、新たに社会保険に加入する従業員に対して、従来の水色の健康保険被保険者証(協会けんぽの場合)が発行されなくなりました。
政府としてはマイナ保険証の普及に向けた大きな取り組みですが、早速医療機関窓口などでの不具合・不便について、2024年12月上旬の報道ですでに聞いている方も多いのではないでしょうか。

マイナ保険証・資格確認書


マイナ保険証の利用を前提とし、マイナ保険証を登録していない、もしくはマイナンバーカードを発行していない人には、従来の被保険者証と似た「資格確認書」として黄色のプラスチック製のカードが発行されます。
(引用)マイナ保険証への移行にあたって|協会けんぽ 大阪支部

資格取得届の新様式


被保険者証の廃止に伴い、資格取得届の新様式が公開されています。
(引用・加工)健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届/厚生年金保険 70歳以上被用者該当届(記入例)|日本年金機構

新様式では赤枠の「資格確認書発行要否」の項目が追加されていますので、資格確認書が必要な場合にはこちらにチェックを入れます。
チェックがない場合であっても、上記のとおりマイナ保険証を利用できる環境のない人へは、職権で資格確認書が発行されますが、発行まで約2か月要するとされています。そのため、資格取得届提出時には対象労働者のマイナ保険証の利用状況を確認の上、資格確認書の発行が大きく遅れることがないように注意して資格取得届を提出しましょう。

自社に関連する法改正、変更には急いで対応を

今回は2024年の人事・労務関連の法改正、変更点を6つ紹介しました。いずれも重要なものばかりですので、運送業では時間外労働の削減に向けた労働時間の見直しを、そのほかの業種も含め雇用契約書や専門業務型裁量労働制に関する書面に漏れがないか、早急に確認・対応が必要です。
社会保険適用拡大、保険証の廃止に伴うものは現在進行形で適切な対応が必要な上、さらに高くなることが予定されている障害所雇用率への対応など継続して取り組む事項も多くありますが、本記事の内容を参考に漏れのない対応を徹底しましょう。
                          
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
支払顧問料110,000預金99,790
--預り金10,210


                    
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
預り金10,210預金10,210


                      
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
支払顧問料110,000預金110,000
補足として、個人の社労士が法人化したときには、顧問料はそのままであっても社労士へ支払う(振り込む)金額が増えます。
ただし、上記のとおり源泉徴収を行った場合、預り金として後日納付を行うため、社労士へ報酬を支払うに当たって要した費用に差は生じませんのでご安心ください。

源泉徴収のワンポイント

上記で個人の士業に報酬を支払うときには源泉聴取が必要と解説しましたが、行政書士については原則として源泉徴収が不要とされています。

”一般的に行政書士の業務に関する報酬については、所得税法第204条第1項に規定する報酬には該当しませんので、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する必要はありません。
 しかし、例えば、依頼した業務が建築基準法第6条等に定める「建築に関する申請若しくは届出」の書類の作成のような場合には、その業務が建築代理士の行う業務に含まれるため、支払調書の提出が必要になります。”
(引用)行政書士に報酬を支払った場合|国税庁

行政書士としての業務のみであれば源泉徴収は不要ですが、行政書士がほかにも所得税法第204条に該当する士業である場合には、源泉徴収が必要ですので注意する必要があります。

仕入税額控除の仕訳

社労士へ報酬を支払う側の会社が消費税の納付義務者である場合、仕入税額控除の対象となります。
仕入税額控除を行う場合の仕訳は次のとおりです。
                           
借方貸方
勘定科目金額勘定科目金額
支払顧問料100,000預金99,790
仮払消費税10,000預り金10,210

労務管理がよりやりやすくなる

ここまでお伝えした通り、就業規則の作成が義務付けられない従業員10人未満の事業所においても就業規則を含む社内のルールを早くから作り上げていくことは、法律上義務付けられていないものの、事業を長く続けていくうえで不可欠な要素です。
ここからは、従業員10人未満の事業所が就業規則を作成するメリットをお伝えしていきます。

顧問料の勘定科目は支払顧問料がおすすめ

社労士への顧問料支払いを仕訳するに当たって、業務委託費でも問題はありません。しかし、いわゆる士業への報酬支払いの場合、支払顧問料や支払報酬をうまく使い分け、後からでも見やすく一貫した仕訳を行うことをおすすめします。
もちろん、今回解説した内容によらず、支払顧問料や業務委託費を用いたひとまとめの仕訳でも問題はありませんし、会社や担当者が分かりやすければそれで問題ありません。ですが、一貫した仕訳ルールになっていない場合、今回解説した勘定科目を用いて仕訳のルールを見直してみてはいかがでしょうか。

業務遂行に求められる能力が著しく不足している場合

先に紹介した試用期間中に求める能力や成果が不十分な場合であっても、結果にのみ着目すべきではなく、そのプロセスを含めて評価することが重要です。
また、結果を出せないことについて改善に向けた指導を重ねたものの、改善が期待できない場合に限られます。
なお、この考え方に基づくと、新卒採用や未経験採用の場合はそもそも即戦力が期待できないため、能力不足を理由とした解雇はまず認められないと考えましょう。

勤務態度が極めて不良な場合

無断欠勤や遅刻が連続し、能力不足の場合と同様に再三の指導によっても改善が期待できない場合に限られます。

職務に耐えられないほどの体調不良の場合

採用早々病欠が続くなど、雇用継続が困難となる体調不良の場合です。
例えば介護職での採用で、採用前から腰痛が常態化しており、採用後も度々業務が中断するようなケースを挙げます。この場合、可能な範囲で軽作業などへの転換を検討できれば望ましいですが、職種を限っての採用であることを考慮して、業務遂行が困難という合理的理由になる余地は大きいでしょう。

経歴や能力についての虚偽の申告があった場合

応募者の能力・職歴を評価し、それに見合う処遇にて採用したものの、その能力・職歴に偽りがあった場合です。
例えば、数年間のマネジメント経験が評価され、求人内容よりも高い給与で採用されたにもかかわらず、実際はマネジメントの補助程度の経験しかなかった、というような場合が挙げられます。
ここでのポイントは「相応の処遇を伴っている」点であって、そうでない場合は能力不足と同様に考えるのが妥当です。
また、未経験者採用の場合、その職種特有の業務については新卒採用と同様に即戦力は期待できません。しかし、社会人経験年数に相応の同僚との協調性や報連相について、著しい不足がある場合は解雇理由として検討の余地が残るでしょう。
そのほか、応募の前提となり選考時に申告した能力そのものを持ち合わせていない、例えばTOEIC900点台かつビジネス英会話が可能という条件の求人で、スコアも提出の上ビジネス英会話も問題ないと申告したにもかかわらず、実際は日常英会話もままならない、というようなケースが考えられます。

社労士との契約は顧問契約だけ?

社労士との契約は顧問契約だけと思われがちですが、実はそうではありません。
社労士の間で通称「スポット契約」と呼ばれる、「顧問契約までは希望しないが、必要に応じて都度業務を依頼したい」というニーズに応えるケースがあります。

⑭65歳を超えて働ける制度


現状努力義務とされている65歳を超えて働ける制度の導入もしくは導入予定の有無、上限年齢、制度の規定方法等を記入します。

⑮常用労働者数


常用労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年以上継続して雇用している、もしくは雇用が見込まれる労働者を指します。

⑯過去1年間の離職者の状況


45歳以上の労働者を解雇した場合、その人数を記入します。
求職活動支援書とは、事業主都合の解雇等、又は経過措置としての継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準に該当しなかったことによる離職予定の高年齢者等が希望した際に、対象労働者の職歴や業績等を記入のうえ作成・交付する書面です。

手続きスポット

例えば入社手続きは1人につき10,000円など、手続きごとに費用が設定されており、依頼する業務に応じた費用を支払います。
相談顧問契約を結んでおり、追加で手続きを依頼する場合もスポット扱いとなることが多いです。

助成金・就業規則スポット

基本的に、社労士の顧問契約に含まれる業務の範囲および顧問料金は、毎月定期的に発生する業務を前提としています。
そのため、助成金申請や就業規則の作成などは毎月の顧問契約には含まれず、顧問料とは別途費用が発生します。
ただし、手続きスポットも含め、顧問契約がある場合、顧問契約なしの場合に比べて費用を割安に設定しているケースもあるので、気になる場合は遠慮せずに社労士に確認しましょう。

社労士との顧問契約で気を付ける点

社労士との顧問契約を検討する際、真っ先に顧問料のことが気になるのは当然のことです。しかし、顧問料だけで決めてしまうと「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
顧問料に加え、社労士との顧問契約においては次の点にも気を付けましょう。

まとめ

就業規則は変更を繰り返していく必要があります。今回は、就業規則の変更手順、気を付けるべきポイントについて解説しました。
就業規則の作成、変更は関連する法律の理解が不十分な状態で行うと、従業員とのトラブルが発生したり、思わぬ不利益を被ったりと、事業主・人事労務担当者を悩ませるリスクが多く潜んでいます。
自社での対応が難しい、時間がかかる場合には一度社会保険労務士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

業務の範囲

上記で、例えば就業規則の作成は顧問料に含まれないのが原則であることをお伝えしました。そこで、就業規則の変更の相談や、自社で変更したものを確認してもらう程度であれば、顧問料の範囲内だと考えた方も多いかもしれません。
そのほか、新しく入社する従業員の雇用契約書の作成や、36協定の作成など、顧問契約していれば追加費用なしで対応してもらえるものと思われた方もいるかもしれませんが、これらはすべて顧問契約の内容次第です。
そのため、社労士との顧問契約が初めてで分からないことが多くても、顧問料に含まれるものと含まれないものはできるだけ細かく確認しましょう。
認識のズレは、後々社労士との間の信頼関係を損なう要因になりかねません。社労士と長く付き合っていくことを念頭に置いて、しっかり見極めることが大切です。

連絡頻度・連絡手段

従来は、何かあれば電話とFAX、書類は郵送、毎月の定期訪問というのが社労士との顧問契約の通例でした。
しかし現在では、メールやチャットなどをメインにする社労士が、新たに開業する社労士を中心に増えてきています。固定電話やFAXを備えず、パソコンとスマートフォンのみで業務を行っていることも珍しくありません。また、コロナ禍でテレワークが急激に普及したのと同様に、定期訪問をオンラインで行う社労士も増えてきています。
そのため、自社が希望する連絡手段と頻度で連絡を取り合えるのかは、見落としがちなものの社労士との顧問契約においては非常に重要なポイントです。

ひな形を使って良いのか

インターネットで検索をすれば容易に就業規則のひな方を入手することができます。
では、このひな形を使って就業規則を作成しても良いのでしょうか。
確かに、これらを利用すれば容易に作成でき、かつ絶対的必要記載事項についても記載を失念することは無いといえるでしょう。
しかし、上述したように、就業規則には業種ごとに作成にあたっての注意点があり、これらをひな形に適切に落とし込む必要があります。
また、会社ごとにひな形に記載されている文言を変更する必要がありますが、その内容が労働基準法等の法律に違反しないようにする必要があります。
ひな形を使う場合には、自社の事情にあっているか、法律に違反していないかなど、慎重に精査しましょう。

専門家への相談の要否

就業規則の作成について、専門家に相談する必要はあるのでしょうか。
就業規則は基本的な事項であり、慎重な作成が求められます。
作成にあたっては労働関係の法律についての知識が必要であり、その内容は非常に難解です。
そのため、できれば専門家に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

社労士の顧問料は相場よりも納得度をチェック

社労士の顧問料について、相場についての考え方や金額の決まり方について解説しました。
また、顧問料のみに目がいきがちですが、社労士との顧問契約は商品の購入などとは異なり、人と人との付き合いそのものです。そのため、顧問料の安さよりも、会社が社労士との顧問契約に求めるものをできる限り明確にした上で、その期待に応えてもらえるかが非常に重要となります。
期待に応えてもらう対価としての顧問料の金額に納得できるか、と考えると、顧問料についての疑問や不安もより小さくなるでしょう。

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。

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