社会保険労務士(社労士)の顧問料の相場は?よくある顧問契約のパターンや顧問料について気を付けるべきポイントを解説

更新日:2024/12/27

顧問社労士

社労士との顧問契約を検討する場合、多くの場合まず気になるのが顧問料のことでしょう。 今回は、社労士との顧問契約に当たって気になる顧問料の決まり方や金額帯に加え、社労士との顧問契約において顧問料以外にも気を付けるべきポイントを解説します。

社労士の役割

社労士は労働基準法などの労働関係法令、また健康保険や厚生年金保険、雇用保険などの社会保険関係法令に精通した労働と社会保険の専門家です。
このように、社労士には「労働分野」と「社会保険分野」の2つの専門分野があり、事業主もしくは人事労務担当者として社労士との顧問契約を検討する場合、労働分野に強い社労士が候補となります。
顧問契約をメインとする社労士と顧問契約することで、以下のメリットが得られます。


  • 労働時間や賃金などの労働条件が違法なものになっていないか相談でき、アドバイスを受けられる

  • 雇用契約書や就業規則などの内容確認、作成を依頼できる

  • 従業員の社会保険手続きを依頼できる

  • 従業員の給与計算を依頼できる

  • 助成金の申請を依頼できる

理由①会社の成長などの内部要因

就業規則は会社の成長、具体的には、

・会社の規模
・事業領域
・職種や勤務形態、給与体系の数
・そのほかの事情

これらに応じて、その時々の会社の実態に沿ったルールでないと意味をなしません。
例えば、夫婦で始めた弁当屋でアルバイトを雇用し、アルバイトが10人を越えたときに就業規則を作成したとしましょう。
それから数年経過し、今では近隣に10店舗を構えるまでに拡大し、各店舗には責任者として社員も雇用しています。さらには、1店舗だけのときはすべてお店で手作りのものを提供していましたが、現在は業務効率化のため一部の食材はセントラルキッチンで加工した上で各店舗へ配送し、それらを各店舗で最終調理の上、創業当時と変わらぬ味を提供しています。
ここで、アルバイトだけを雇用し、1店舗だけで提供していた頃と比べると、

・複数店舗の開設、正社員の雇用
・セントラルキッチン開設、スタッフ雇用
・各店舗への配送スタッフの雇用

といった変化が起こっています。
正社員となれば、アルバイトとは異なり月給制が想定され、賞与があるかもしれません。
また、店舗での販売に間に合うよう、セントラルキッチンのスタッフの勤務時間は店舗の営業より早いことが想定されます。
さらに、セントラルキッチンから店舗へ車で配送するのであれば、社用車についてのルールも必要です。
これらについて、作成した当時のままの就業規則では、到底対応できないと考えられるでしょう。
加えて、現在は近隣エリアで店舗を拡大していますが、都道府県を超えて拡大していくと仮定すると、

・社員は全国転勤とするのか、それとも現地で採用するのか
・各エリアの指揮命令などをどのように設計するか
・セントラルキッチンからの配送をすべて自社の従業員で行うのか、外部に委託するのか、外部に委託した場合は配送に従事していた従業員の雇用をどうするか

といった検討事項が想定されます。
このように、就業規則はその時々の会社をコントロールできるルールでなければ意味をなさず、会社とともに変容を続けていくものです。

理由②法改正などの外部要因

ここまで、会社の成長に合わせて就業規則の変更は継続することを解説してきました。では、会社が一定規模まで拡大し、そのまま維持する場合はどうなるのでしょうか。
結論、就業規則の変更は継続します。それは法改正による制度変更や、新たな制度の創設に対応する必要があるからです。
例えば、2022(令和4)年10月1日に改正育児・介護休業法が施行されたことにより、新たに出生児育児休業(通称:産後パパ育休)制度がスタートしました。
同法には、労使協定を締結することで入社1年未満の従業員からの取得の申し出を拒否できる、という但し書きがあります。しかし、改正時に合わせて就業規則を変更していなければ、該当する従業員を除外するための労使協定もありません。そのため、入社1年未満の従業員であっても、申し出があれば産後パパ育休制度を認めることになってしまいます。
つまり、会社にしばらく大きな変化がない場合であっても、法改正に対応した就業規則の変更の必要性があるため、就業規則の変更は引き続き必要となるのです。

社労士の顧問料の相場

ここからは、気になる社労士の顧問料について、まずは相場という観点から解説していきます。
先に結論として、社労士の顧問料の相場を「○○円」という形で明示するのは非常に困難です。場合によって、金額は大きく異なってきます。
少し前までは、顧問契約に含まれる業務に標準的な金額が設定されており、その金額から大きく外れない範囲で社労士それぞれが顧問料を設定していました。
しかし、現在では上記設定も廃止され、社労士それぞれが自由に顧問料を設定できるようになりました。そのため、社労士の数も多い都心部では価格競争が強くなる一方、社労士事務所の規模や対応のスピード感に加え、人事評価制度の導入や従業員への研修代行、クラウドシステムの導入支援など業務の幅を広げ、付加価値を付けた価格設定も見受けられます。
こういった経緯から、「どの社労士」と「どのような顧問契約」を結ぶかという組み合わせの数だけ、顧問契約・顧問料が変わってくるようになったのです。車や家電製品のような底値や相場は実質的にはないといってよいでしょう。
その上で、ここからはピンポイントの相場に代えて、社労士はどのように顧問料を設定しているのかについて、よくあるケースを紹介します。社労士の顧問料についての理解を深めていただける内容となっていますので、ぜひ最後までお読みください。

顧問契約のパターン

まずは、社労士との顧問契約の代表的なパターンを3つ紹介します。

①相談のみの「相談顧問契約」


相談のみの顧問契約は、社会保険手続きや給与計算などの実務は代行せず、労働関係法令についての相談相手となってもらえる契約形態です。
次のような場合、相談のみの顧問契約がおすすめです。

  • 現状具体的な困りごとはないが、今後の事業拡大に向けて相談できる専門家がいてほしい

  • 労務に関する法改正など最新情報を提供してほしい

  • 今後従業員を雇用する予定があり、最初から法令に沿った労働環境を整備したい

  • 従業員が少なく給与計算、社会保険手続きなどの実務のボリュームが少ない

  • 社会保険手続き、給与計算の実務担当者がいるが、困ったときの相談役がいてほしい など


社労士との顧問契約が初めての場合も、まずは相談のみの契約からスタートし、その後は必要に応じて依頼する業務を広げることを検討するとよいでしょう。

②相談に加え社会保険手続きを含めた「手続き顧問契約」


相談顧問契約に年金事務所やハローワークでの手続き業務をプラスした契約形態です。
次のような場合、相談+社会保険手続きの顧問契約がおすすめです。

  • これまで短時間アルバイトだけだったが、社員を雇用し、初めての社会保険手続きに不安がある

  • 給与計算はシンプルで困っていないが、社会保険の手続き、給与から天引きする社会保険料についての不安を解消したい

  • 従業員の入退社が多く、その都度役所で手続きする手間を省きたい


一般的に、社員を雇用すると社会保険手続きが発生します。そのため、手続きに不安がある場合には、手続き業務も併せて依頼できる社労士との顧問契約がおすすめです。

③相談、社会保険手続きに給与計算を加えた「総合顧問契約」


手続き顧問契約に給与計算業務をプラスした契約形態です。
次のような場合、相談のみの顧問契約がおすすめです。

  • 残業代を正しく計算できるか不安

  • 社会保険料や税金など、給与から天引きする金額を正しく計算できるか不安

  • 紙やエクセルでの対応が厳しくなってきた

  • 手当の種類が増え、月途中に入退社があった際の計算など、一貫したルールに沿って計算したい

  • 従業員の人数が多く、社内の給与担当者の負担が大きい


基本給と通勤手当のみの支給であれば難しくないものの、残業代や社会保険料、所得税の計算などは正しい知識がなければ未払い賃金が発生してしまうおそれがあります。
そのため、給与計算に自信がない場合や担当者の負担が過大になっている場合、給与計算まで含めて依頼できる社労士との顧問契約がおすすめです。
(引用)就業規則(変更)届記入例|厚生労働省

新旧対照表で変更を行う場合、変更の都度新旧対照表を重ねていくことになります。
一回の変更作業ごとの作業量は最小限に抑えられるメリットがある一方で、新旧対照表の枚数が増えるほど、参照の上に読み替えを必要とする箇所が増えるため、最新の内容を確認する際に時間を要するデメリットも併せ持ちます。
そのため、新旧対照表の作成にて変更を行う場合も、時には次に解説する最新版の就業規則を作成し、古くなった新旧対照表を破棄して見やすくするのがおすすめです。

変更後の就業規則全体を作成


2つ目の方法は変更後の就業規則そのものの作成です。
この場合、新旧対照表とは異なり就業規則本文そのものを変更します。確認の際は最新の就業規則の本文のみを参照すればよいので、確認のしやすさがメリットです。
一方で、最新版のみを見ただけでは、その内容が過去に変更されているのか、変更されているのであれば変更前はどのような内容であったかなどは、ひと目で確認できないデメリットも併せ持ちます。
変更の有無について、一般的には就業規則の最終ページに「附則」「実施規則」と銘打って変更箇所、変更実施日時を記録するため、確認の手間は多くありません。しかしながら、変更前の内容を確認するには変更前の就業規則そのものを参照する必要があります。
もちろん、就業規則本文を変更する際に、削除する内容をそのまま削除する代わりに抹消線を用いる方法もありますが、変更のたびに就業規則そのもののボリュームが増えていくので、一般的な方法ではありません。
そのため、附則などに改定履歴を残す際のワンポイントとして、条項の増減により変動し得る条項番号だけではなく、
「1カ月単位の変形労働時間制の起算日」
「通勤手当の計算方法」
など、条項のタイトルや項目名と改定実施日を附則に残すことをおすすめします。

顧問料の変動要因

社労士との顧問契約の代表例を紹介したところで、社労士の顧問料がどのように計算され、なぜ金額に幅が生じるのかについて解説します。

人数による変動


基本的に、社労士の顧問料は従業員の人数により変動します。

■相談顧問契約
相談顧問契約では、「1人あたりいくら」というよりも、例えば5人までの会社は15,000円、10人までは20,000円といったように、一定の人数で区切って顧問料を設定していることが多いです。

■手続き顧問契約・総合顧問契約
従業員の人数に比例して作業量が増加するこれらの契約では、例えば相談顧問契約の顧問料に加え、「基本料金+1人あたりの金額」を設定していることが多いです。
例としては次のようになります。

■手続き顧問契約
手続き基本料金10,000円+1人あたり1,000円

【従業員5人の場合】
相談顧問契約15,000円+手続き基本料金10,000円+5人で5,000円=30,000円

■総合顧問契約
手続き・給与計算基本料金20,000円+1人あたり2,000円

【従業員5人の場合】
相談顧問契約15,000円+手続き・給与計算基本料金20,000円+5人で10,000円=45,000円

人数の変動を顧問料に反映させるタイミングは、

  • 定期的に反映:半年ごと、1年ごと など

  • 一定の人数が増えた段階で反映:5人増えるごと など


以上が一例ですが、社労士次第でさまざまです。
もしくは、あらかじめ人数の変動を想定の上、「手続き顧問契約・総合顧問契約の場合も〇人まではいくら」と金額を定めているケースもあり、こちらのほうが多く見られます。

追加オプションの料金


上記の計算に加え、社労士との顧問契約にはいわゆる追加オプションも複数あります。代表的なものを紹介します。

■手続き書類の発送オプション
社労士が行う手続き業務のほぼすべては電子申請にて行えるようになっているため、年金事務所やハローワークで発行された完了書類・控書類をPDFなどのデータで受け取り、社内で必要に応じて印刷するというパターンが普及してきています。
しかし、「電子申請ではなく年金事務所などのハンコが押された書類が欲しい」「電子申請であっても印刷されたものを送付してほしい」という場合には、送付にかかる実費に加えて送付書類の印刷などの追加の業務が発生し、追加オプションの費用が加算されます。

■給与明細の発送オプション
給与明細もPDFで送付、もしくは従業員がオンラインで給与明細を閲覧・ダウンロードできるクラウドサービスの利用が近年増えています。
封筒に入った状態の給与明細の送付を依頼する場合は、手続き書類の発送オプション同様に追加業務の発生による追加オプションの費用が加算されます。

■勤怠集計オプション
紙のタイムカードや、日々の勤務時間のみが入力されたエクセルなどを社労士へ渡す場合、クラウド勤怠システムを導入済み、もしくはエクセルなどで集計されたものを渡す場合に比べて社労士の作業量が増えます。当然、その分の費用が顧問料に上乗せされます。
このように、依頼する作業の手間賃に当たる追加オプション費用は、社労士の顧問料を計算する際に含まれます。前もって理解しておきましょう。

ハラスメントなど就業環境に関すること

職場でのハラスメント(言動、表現、掲示など)に関することの相談先は労働基準監督署の総合労働相談コーナーもしくは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
引用:就業規則(変更)届記入例|厚生労働省

記載例を参考に、青文字部分を入力もしくは記入します。
新旧対照表を別紙で作成している場合や、変更後の就業規則を添付する場合は改正前・改正後欄に「別紙参照」と入力もしくは記入すれば問題ありません。
また、労働保険番号は労働保険関係成立届控え、労働保険料申告書などに記載されています。

変更届の提出期限


変更届の提出期限は「速やかに」とされていますので、変更届の作成まで完了したら速やかに提出しましょう。
改定実施日の前後どちらでも変更届の提出は可能です。

変更届の提出先


変更届の提出先は事業場を管轄する労働基準監督署です。
なお、複数の拠点に同一の就業規則を適用する場合、本社を管轄する労働基準監督署へ一括届出事業所一覧を添付して提出します。
窓口へ持参するほか、郵送に加えて電子申請も可能です。

変更届の添付書類


・変更届 正副各1部
以下いずれか
・新旧対照表 正副各1部
・変更後の就業規則 正副各1部
郵送の場合
・切手を貼った返信用封筒

会社控用の新旧対照表もしくは変更後の就業規則に押印を受けるため、上記のとおり正副それぞれ1部ずつ提出します。
今後助成金の申請などで、受理印のある就業規則などの添付を求められることがあるため、正副を用意した上で受理印のある控えを会社で保管しておきます。控え用の副を用意していない場合、受理印のある控えは受け取れませんので忘れず用意しましょう。
なお、電子申請の場合、変更届に電子受理印が押印されたものが受理控えとして発行されます。

提出後は周知を忘れずに

ここまでで無事届出を提出し、受理印のある控えの受け取りまで済みましたが、これで終わりではありません。
就業規則の作成、変更時には従業員への周知が必要です。周知して初めて就業規則の変更内容が有効となるため、変更届の提出後はすぐ周知に取りかかりましょう。
周知の方法として一般的なものを紹介します。
・受理印のある控えをコピーの上、事業場ごとに配備
・社内共有フォルダやイントラネットへの格納
いずれも別途回覧板やメールで就業規則を変更した旨も周知します。
なお、周知とは従業員がいつでも閲覧可能である状態をいいますので、金庫や鍵付きロッカーへの保管、アクセス制限のあるフォルダなどへの格納では周知を果たしたとはいえません。

試用期間の定義を共有することが大切

ここまで解説してきたとおり、試用期間中は使用者の裁量で自由に解雇が認められているのではありません。試用期間中に限り、通常の労働者を解雇する場合に比べて、採用選考時には判断できない事柄について解雇が認められる範囲が広くなっているということです。
                         
採用する労働者助成金の合計額支給期数
高年齢者、母子家庭の母等50万円 (短時間:30万円)25万円×2期 (短時間:15万円×2期)
身体・知的障害者50万円 (短時間:30万円)25万円×2期 (短時間:15万円×2期)
精神障害者、重度知的障がい者等100万円 (短時間:30万円)33万円※2 ×3期 (短時間:15万円×2期)

なぜ解雇がトラブルになるのか

試用期間中に限った話ではありませんが、解雇がトラブルになるのは大抵「使用者からの評価」と「労働者の自己評価」が大きくかけ離れていることが原因です。
つまり、労働者からすると「自分は有能なのになぜ解雇されるのか、納得できない」という感情が解雇トラブルの根底にあります。
この状況を回避するために、使用者が取り組むべきポイントを解説します。

解雇の納得度を高める


繰り返しになりますが、解雇がトラブルになるケースの大半は、労働者の自己評価が高いために解雇に納得できない点にあります。
この点に着目し、使用者として講ずるべき取り組みを2つ紹介します。

評価基準を言語化して共有する
例えば次のようなものが考えられます。

・試用期間中に月次決算業務を一人で完結できるようになる
・試用期間中に取引先からの受注から発注までの業務を標準期間内に完結できるようになる
・試用期間中に、部下〇名の業務進捗を管理し、期日内に完結できるマネジメント力を発揮する

評価基準は、「使用者が求めている業務遂行能力を満たしているかどうか」であることが多いでしょう。しかし、業務遂行能力と一言でいっても業界、職種、ポジションによりさまざまです。
したがって、試用期間中に「どんな能力を身に付けてほしいか」「どんな能力を発揮してほしいか」「どんな成果を出してほしいか」を言語化し、評価基準と共に雇用契約書に明記する、もしくは試用期間についての覚書を用意するなどして、必ず書面で共有しましょう。

評価根拠を労働者発信のものにする
前提として、先に解説した評価基準を共有した上で、その評価を定期的に共有しましょう。
そのための方法として次のようなものが考えられます。

・業務日報、週報を根拠に、労働者の自己評価と使用者からの評価を共有する
・業務理解度を確認するテストを行い、その結果を根拠に労働者の自己評価と使用者からの評価を共有する

労働者が解雇理由に納得できない理由の一つは、解雇理由を「急に示された使用者からの一方的な評価」と受け取るためです。
これを回避するために、労働者発信の情報に基づき労働者の自己評価と使用者からの評価をリアルタイムかつ継続して共有することで、その先にある結論への納得度を高めることが期待できます。

労務管理がよりやりやすくなる

ここまでお伝えした通り、就業規則の作成が義務付けられない従業員10人未満の事業所においても就業規則を含む社内のルールを早くから作り上げていくことは、法律上義務付けられていないものの、事業を長く続けていくうえで不可欠な要素です。
ここからは、従業員10人未満の事業所が就業規則を作成するメリットをお伝えしていきます。

試用期間中の解雇が認められるケース

ここからは、試用期間中の解雇の理由が社会通念上相当であると判断され得るケースを、あくまで一例として紹介します。
これらに当てはまれば解雇が認められる、ではなく、解雇が認められる場合についての解釈・考え方への理解を深める観点でお読みください。

業務遂行に求められる能力が著しく不足している場合

先に紹介した試用期間中に求める能力や成果が不十分な場合であっても、結果にのみ着目すべきではなく、そのプロセスを含めて評価することが重要です。
また、結果を出せないことについて改善に向けた指導を重ねたものの、改善が期待できない場合に限られます。
なお、この考え方に基づくと、新卒採用や未経験採用の場合はそもそも即戦力が期待できないため、能力不足を理由とした解雇はまず認められないと考えましょう。

勤務態度が極めて不良な場合

無断欠勤や遅刻が連続し、能力不足の場合と同様に再三の指導によっても改善が期待できない場合に限られます。

職務に耐えられないほどの体調不良の場合

採用早々病欠が続くなど、雇用継続が困難となる体調不良の場合です。
例えば介護職での採用で、採用前から腰痛が常態化しており、採用後も度々業務が中断するようなケースを挙げます。この場合、可能な範囲で軽作業などへの転換を検討できれば望ましいですが、職種を限っての採用であることを考慮して、業務遂行が困難という合理的理由になる余地は大きいでしょう。

経歴や能力についての虚偽の申告があった場合

応募者の能力・職歴を評価し、それに見合う処遇にて採用したものの、その能力・職歴に偽りがあった場合です。
例えば、数年間のマネジメント経験が評価され、求人内容よりも高い給与で採用されたにもかかわらず、実際はマネジメントの補助程度の経験しかなかった、というような場合が挙げられます。
ここでのポイントは「相応の処遇を伴っている」点であって、そうでない場合は能力不足と同様に考えるのが妥当です。
また、未経験者採用の場合、その職種特有の業務については新卒採用と同様に即戦力は期待できません。しかし、社会人経験年数に相応の同僚との協調性や報連相について、著しい不足がある場合は解雇理由として検討の余地が残るでしょう。
そのほか、応募の前提となり選考時に申告した能力そのものを持ち合わせていない、例えばTOEIC900点台かつビジネス英会話が可能という条件の求人で、スコアも提出の上ビジネス英会話も問題ないと申告したにもかかわらず、実際は日常英会話もままならない、というようなケースが考えられます。

社労士との契約は顧問契約だけ?

社労士との契約は顧問契約だけと思われがちですが、実はそうではありません。
社労士の間で通称「スポット契約」と呼ばれる、「顧問契約までは希望しないが、必要に応じて都度業務を依頼したい」というニーズに応えるケースがあります。
(参考)雇用保険被保険者喪失届|ハローワークインターネットサービス

⑧・⑨定年制の状況


定年の有無、定年制度の改定・廃止予定の有無を記入します。

⑩・⑪雇用継続制度の状況


雇用継続制度の就業規則への記載有無、経過措置により雇用確保措置の上限年齢を限定している場合は上限年齢、経過措置の規定方法等を記入します。

⑫・⑬創業支援等措置


雇用ではない働き方の導入もしくは導入予定の有無、その内容を記入します。
(右ページ)

⑭65歳を超えて働ける制度


現状努力義務とされている65歳を超えて働ける制度の導入もしくは導入予定の有無、上限年齢、制度の規定方法等を記入します。

⑮常用労働者数


常用労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年以上継続して雇用している、もしくは雇用が見込まれる労働者を指します。

⑯過去1年間の離職者の状況


45歳以上の労働者を解雇した場合、その人数を記入します。
求職活動支援書とは、事業主都合の解雇等、又は経過措置としての継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準に該当しなかったことによる離職予定の高年齢者等が希望した際に、対象労働者の職歴や業績等を記入のうえ作成・交付する書面です。

手続きスポット

例えば入社手続きは1人につき10,000円など、手続きごとに費用が設定されており、依頼する業務に応じた費用を支払います。
相談顧問契約を結んでおり、追加で手続きを依頼する場合もスポット扱いとなることが多いです。

助成金・就業規則スポット

基本的に、社労士の顧問契約に含まれる業務の範囲および顧問料金は、毎月定期的に発生する業務を前提としています。
そのため、助成金申請や就業規則の作成などは毎月の顧問契約には含まれず、顧問料とは別途費用が発生します。
ただし、手続きスポットも含め、顧問契約がある場合、顧問契約なしの場合に比べて費用を割安に設定しているケースもあるので、気になる場合は遠慮せずに社労士に確認しましょう。

社労士との顧問契約で気を付ける点

社労士との顧問契約を検討する際、真っ先に顧問料のことが気になるのは当然のことです。しかし、顧問料だけで決めてしまうと「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
顧問料に加え、社労士との顧問契約においては次の点にも気を付けましょう。

まとめ

就業規則は変更を繰り返していく必要があります。今回は、就業規則の変更手順、気を付けるべきポイントについて解説しました。
就業規則の作成、変更は関連する法律の理解が不十分な状態で行うと、従業員とのトラブルが発生したり、思わぬ不利益を被ったりと、事業主・人事労務担当者を悩ませるリスクが多く潜んでいます。
自社での対応が難しい、時間がかかる場合には一度社会保険労務士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

業務の範囲

上記で、例えば就業規則の作成は顧問料に含まれないのが原則であることをお伝えしました。そこで、就業規則の変更の相談や、自社で変更したものを確認してもらう程度であれば、顧問料の範囲内だと考えた方も多いかもしれません。
そのほか、新しく入社する従業員の雇用契約書の作成や、36協定の作成など、顧問契約していれば追加費用なしで対応してもらえるものと思われた方もいるかもしれませんが、これらはすべて顧問契約の内容次第です。
そのため、社労士との顧問契約が初めてで分からないことが多くても、顧問料に含まれるものと含まれないものはできるだけ細かく確認しましょう。
認識のズレは、後々社労士との間の信頼関係を損なう要因になりかねません。社労士と長く付き合っていくことを念頭に置いて、しっかり見極めることが大切です。

連絡頻度・連絡手段

従来は、何かあれば電話とFAX、書類は郵送、毎月の定期訪問というのが社労士との顧問契約の通例でした。
しかし現在では、メールやチャットなどをメインにする社労士が、新たに開業する社労士を中心に増えてきています。固定電話やFAXを備えず、パソコンとスマートフォンのみで業務を行っていることも珍しくありません。また、コロナ禍でテレワークが急激に普及したのと同様に、定期訪問をオンラインで行う社労士も増えてきています。
そのため、自社が希望する連絡手段と頻度で連絡を取り合えるのかは、見落としがちなものの社労士との顧問契約においては非常に重要なポイントです。

ひな形を使って良いのか

インターネットで検索をすれば容易に就業規則のひな方を入手することができます。
では、このひな形を使って就業規則を作成しても良いのでしょうか。
確かに、これらを利用すれば容易に作成でき、かつ絶対的必要記載事項についても記載を失念することは無いといえるでしょう。
しかし、上述したように、就業規則には業種ごとに作成にあたっての注意点があり、これらをひな形に適切に落とし込む必要があります。
また、会社ごとにひな形に記載されている文言を変更する必要がありますが、その内容が労働基準法等の法律に違反しないようにする必要があります。
ひな形を使う場合には、自社の事情にあっているか、法律に違反していないかなど、慎重に精査しましょう。

専門家への相談の要否

就業規則の作成について、専門家に相談する必要はあるのでしょうか。
就業規則は基本的な事項であり、慎重な作成が求められます。
作成にあたっては労働関係の法律についての知識が必要であり、その内容は非常に難解です。
そのため、できれば専門家に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

社労士の顧問料は相場よりも納得度をチェック

社労士の顧問料について、相場についての考え方や金額の決まり方について解説しました。
また、顧問料のみに目がいきがちですが、社労士との顧問契約は商品の購入などとは異なり、人と人との付き合いそのものです。そのため、顧問料の安さよりも、会社が社労士との顧問契約に求めるものをできる限り明確にした上で、その期待に応えてもらえるかが非常に重要となります。
期待に応えてもらう対価としての顧問料の金額に納得できるか、と考えると、顧問料についての疑問や不安もより小さくなるでしょう。

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。

関連記事