労務相談とは?窓口としての社労士、弁護士の違いは?労務相談について解説

更新日:2024/11/11

労働基準法

労務相談とは、書いて字のとおり、労務に関する相談全般をいいます。 しかし、経営者の方や労務の実務に携わっている方にとっては、具体的にどのような内容が労務相談に該当し、どこに相談すべきか悩むことも多いのではないでしょうか。 本記事では労務相談を大きく分類した上で、判断に困った場合の相談先を解説します。

労務相談とは

労働相談と一言でいっても、大きく3つに分類できます。

①従業員と会社の間で行われる労務相談
②従業員と相談先の間で行われる労務相談
③会社と相談先の間で行われる労務相談

会社の相談先について知っておくべきなのはもちろんのこと、従業員が会社への相談後、もしくは相談に先立って相談する先を知っておくことで、労務トラブルの予防に役立ちます。
本記事では③に絞って解説を進めますが、労務相談において何より大切なポイントは「判断に迷う場合は即答しない」ことです。
スマートフォンやスマートウォッチが普及している今日では、一昔前のボイスレコーダー同様クリアかつ手軽に音声を記録することが可能です。さらには音声のみならず、動画も手軽かつ鮮明に記録できることが、従業員の社内でのやり取りを記録することへのハードルを大幅に下げていることを認識しましょう。
うっかり間違った回答をしてしまうと、後々労働トラブルに発展した際に言い逃れができなくなります。
そればかりか、インターネットやSNSへ投稿されてしまうと、驚くほどの速さで拡散され、炎上しかねません。一度拡散されてしまった動画などはすべて削除するのが事実上不可能で、ネット上に半永久的に残ってしまいます。
そういった事態にならないよう、従業員からのあらゆる質問・相談について、判断に迷う場合はひとまず預かり、確認した上で回答しましょう。これが、社内における労務相談の鉄則です。

理由①会社の成長などの内部要因

就業規則は会社の成長、具体的には、

・会社の規模
・事業領域
・職種や勤務形態、給与体系の数
・そのほかの事情

これらに応じて、その時々の会社の実態に沿ったルールでないと意味をなしません。
例えば、夫婦で始めた弁当屋でアルバイトを雇用し、アルバイトが10人を越えたときに就業規則を作成したとしましょう。
それから数年経過し、今では近隣に10店舗を構えるまでに拡大し、各店舗には責任者として社員も雇用しています。さらには、1店舗だけのときはすべてお店で手作りのものを提供していましたが、現在は業務効率化のため一部の食材はセントラルキッチンで加工した上で各店舗へ配送し、それらを各店舗で最終調理の上、創業当時と変わらぬ味を提供しています。
ここで、アルバイトだけを雇用し、1店舗だけで提供していた頃と比べると、

・複数店舗の開設、正社員の雇用
・セントラルキッチン開設、スタッフ雇用
・各店舗への配送スタッフの雇用

といった変化が起こっています。
正社員となれば、アルバイトとは異なり月給制が想定され、賞与があるかもしれません。
また、店舗での販売に間に合うよう、セントラルキッチンのスタッフの勤務時間は店舗の営業より早いことが想定されます。
さらに、セントラルキッチンから店舗へ車で配送するのであれば、社用車についてのルールも必要です。
これらについて、作成した当時のままの就業規則では、到底対応できないと考えられるでしょう。
加えて、現在は近隣エリアで店舗を拡大していますが、都道府県を超えて拡大していくと仮定すると、

・社員は全国転勤とするのか、それとも現地で採用するのか
・各エリアの指揮命令などをどのように設計するか
・セントラルキッチンからの配送をすべて自社の従業員で行うのか、外部に委託するのか、外部に委託した場合は配送に従事していた従業員の雇用をどうするか

といった検討事項が想定されます。
このように、就業規則はその時々の会社をコントロールできるルールでなければ意味をなさず、会社とともに変容を続けていくものです。

理由②法改正などの外部要因

ここまで、会社の成長に合わせて就業規則の変更は継続することを解説してきました。では、会社が一定規模まで拡大し、そのまま維持する場合はどうなるのでしょうか。
結論、就業規則の変更は継続します。それは法改正による制度変更や、新たな制度の創設に対応する必要があるからです。
例えば、2022(令和4)年10月1日に改正育児・介護休業法が施行されたことにより、新たに出生児育児休業(通称:産後パパ育休)制度がスタートしました。
同法には、労使協定を締結することで入社1年未満の従業員からの取得の申し出を拒否できる、という但し書きがあります。しかし、改正時に合わせて就業規則を変更していなければ、該当する従業員を除外するための労使協定もありません。そのため、入社1年未満の従業員であっても、申し出があれば産後パパ育休制度を認めることになってしまいます。
つまり、会社にしばらく大きな変化がない場合であっても、法改正に対応した就業規則の変更の必要性があるため、就業規則の変更は引き続き必要となるのです。

労務相談の種類と相談先

ここからは、労務相談を大きくジャンル分けした上で、それぞれの代表例と問い合わせ先を紹介します。

労働条件その他労働基準法および関連法規に関すること

・職種、業務内容、契約期間、労働時間、休日、賃金などの労働条件
・就業規則に関すること
・残業時間や36協定などの労使協定
・最低賃金に関すること

これらの相談先は労働基準監督署の監督課(方面)です。
(引用)就業規則(変更)届記入例|厚生労働省

新旧対照表で変更を行う場合、変更の都度新旧対照表を重ねていくことになります。
一回の変更作業ごとの作業量は最小限に抑えられるメリットがある一方で、新旧対照表の枚数が増えるほど、参照の上に読み替えを必要とする箇所が増えるため、最新の内容を確認する際に時間を要するデメリットも併せ持ちます。
そのため、新旧対照表の作成にて変更を行う場合も、時には次に解説する最新版の就業規則を作成し、古くなった新旧対照表を破棄して見やすくするのがおすすめです。

変更後の就業規則全体を作成


2つ目の方法は変更後の就業規則そのものの作成です。
この場合、新旧対照表とは異なり就業規則本文そのものを変更します。確認の際は最新の就業規則の本文のみを参照すればよいので、確認のしやすさがメリットです。
一方で、最新版のみを見ただけでは、その内容が過去に変更されているのか、変更されているのであれば変更前はどのような内容であったかなどは、ひと目で確認できないデメリットも併せ持ちます。
変更の有無について、一般的には就業規則の最終ページに「附則」「実施規則」と銘打って変更箇所、変更実施日時を記録するため、確認の手間は多くありません。しかしながら、変更前の内容を確認するには変更前の就業規則そのものを参照する必要があります。
もちろん、就業規則本文を変更する際に、削除する内容をそのまま削除する代わりに抹消線を用いる方法もありますが、変更のたびに就業規則そのもののボリュームが増えていくので、一般的な方法ではありません。
そのため、附則などに改定履歴を残す際のワンポイントとして、条項の増減により変動し得る条項番号だけではなく、
「1カ月単位の変形労働時間制の起算日」
「通勤手当の計算方法」
など、条項のタイトルや項目名と改定実施日を附則に残すことをおすすめします。

社会保険に関すること

ここでは従業員についての公的保険を総称して社会保険といいますが、社会保険は大きく次の4つに分類できます。

労災保険に関すること


・会社の労働保険(労災保険・雇用保険)の加入、労働保険料に関すること
・就業中、通勤途中のけが、就業に関連した傷病に関すること
・労災保険の申請に関すること

これらの相談先は労働基準監督署の労災課です。

雇用保険に関すること


・会社の雇用保険の加入に関すること
・従業員の雇用保険加入条件に関すること
・退職時の離職票発行に関すること

これらの相談先はハローワークの雇用保険適用課です。

・育児、介護休業中の給付に関することの相談先はハローワークの雇用継続課です。

・失業保険の受給に関すること
・再就職手当、就業促進定着手当に関すること
・従業員が持参した採用証明書、就労証明書などに関すること

これらの相談先はハローワークの雇用保険給付課です。

健康保険に関すること


・会社の健康保険加入に関すること
・従業員の健康保険加入条件、扶養家族の加入に関すること
・会社が納付する健康保険料に関すること

これらの相談先は日本年金機構です。

・傷病手当金(業務外の傷病)、出産手当金(産前産後休業中の給付)に関すること
・退職後の任意継続被保険者に関すること

これらの相談先は協会けんぽ 都道府県支部です。
※会社が健康保険組合、国民健康保険組合に加入している場合はそれぞれの担当窓口をご確認ください。

厚生年金保険に関すること


・会社の厚生年金保険加入に関すること
・従業員の厚生年金保険加入条件、扶養家族の加入に関すること
・会社が納付する厚生年金保険料に関すること

これらの相談先は日本年金機構です。

ハラスメントなど就業環境に関すること


職場でのハラスメント(言動、表現、掲示など)に関することの相談先は労働基準監督署の総合労働相談コーナーもしくは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。

ハラスメントなど就業環境に関すること

職場でのハラスメント(言動、表現、掲示など)に関することの相談先は労働基準監督署の総合労働相談コーナーもしくは都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)です。
引用:就業規則(変更)届記入例|厚生労働省

記載例を参考に、青文字部分を入力もしくは記入します。
新旧対照表を別紙で作成している場合や、変更後の就業規則を添付する場合は改正前・改正後欄に「別紙参照」と入力もしくは記入すれば問題ありません。
また、労働保険番号は労働保険関係成立届控え、労働保険料申告書などに記載されています。

変更届の提出期限


変更届の提出期限は「速やかに」とされていますので、変更届の作成まで完了したら速やかに提出しましょう。
改定実施日の前後どちらでも変更届の提出は可能です。

変更届の提出先


変更届の提出先は事業場を管轄する労働基準監督署です。
なお、複数の拠点に同一の就業規則を適用する場合、本社を管轄する労働基準監督署へ一括届出事業所一覧を添付して提出します。
窓口へ持参するほか、郵送に加えて電子申請も可能です。

変更届の添付書類


・変更届 正副各1部
以下いずれか
・新旧対照表 正副各1部
・変更後の就業規則 正副各1部
郵送の場合
・切手を貼った返信用封筒

会社控用の新旧対照表もしくは変更後の就業規則に押印を受けるため、上記のとおり正副それぞれ1部ずつ提出します。
今後助成金の申請などで、受理印のある就業規則などの添付を求められることがあるため、正副を用意した上で受理印のある控えを会社で保管しておきます。控え用の副を用意していない場合、受理印のある控えは受け取れませんので忘れず用意しましょう。
なお、電子申請の場合、変更届に電子受理印が押印されたものが受理控えとして発行されます。

提出後は周知を忘れずに

ここまでで無事届出を提出し、受理印のある控えの受け取りまで済みましたが、これで終わりではありません。
就業規則の作成、変更時には従業員への周知が必要です。周知して初めて就業規則の変更内容が有効となるため、変更届の提出後はすぐ周知に取りかかりましょう。
周知の方法として一般的なものを紹介します。
・受理印のある控えをコピーの上、事業場ごとに配備
・社内共有フォルダやイントラネットへの格納
いずれも別途回覧板やメールで就業規則を変更した旨も周知します。
なお、周知とは従業員がいつでも閲覧可能である状態をいいますので、金庫や鍵付きロッカーへの保管、アクセス制限のあるフォルダなどへの格納では周知を果たしたとはいえません。

試用期間の定義を共有することが大切

ここまで解説してきたとおり、試用期間中は使用者の裁量で自由に解雇が認められているのではありません。試用期間中に限り、通常の労働者を解雇する場合に比べて、採用選考時には判断できない事柄について解雇が認められる範囲が広くなっているということです。
                         
採用する労働者助成金の合計額支給期数
高年齢者、母子家庭の母等50万円 (短時間:30万円)25万円×2期 (短時間:15万円×2期)
身体・知的障害者50万円 (短時間:30万円)25万円×2期 (短時間:15万円×2期)
精神障害者、重度知的障がい者等100万円 (短時間:30万円)33万円※2 ×3期 (短時間:15万円×2期)

なぜ解雇がトラブルになるのか

試用期間中に限った話ではありませんが、解雇がトラブルになるのは大抵「使用者からの評価」と「労働者の自己評価」が大きくかけ離れていることが原因です。
つまり、労働者からすると「自分は有能なのになぜ解雇されるのか、納得できない」という感情が解雇トラブルの根底にあります。
この状況を回避するために、使用者が取り組むべきポイントを解説します。

解雇の納得度を高める


繰り返しになりますが、解雇がトラブルになるケースの大半は、労働者の自己評価が高いために解雇に納得できない点にあります。
この点に着目し、使用者として講ずるべき取り組みを2つ紹介します。

評価基準を言語化して共有する
例えば次のようなものが考えられます。

・試用期間中に月次決算業務を一人で完結できるようになる
・試用期間中に取引先からの受注から発注までの業務を標準期間内に完結できるようになる
・試用期間中に、部下〇名の業務進捗を管理し、期日内に完結できるマネジメント力を発揮する

評価基準は、「使用者が求めている業務遂行能力を満たしているかどうか」であることが多いでしょう。しかし、業務遂行能力と一言でいっても業界、職種、ポジションによりさまざまです。
したがって、試用期間中に「どんな能力を身に付けてほしいか」「どんな能力を発揮してほしいか」「どんな成果を出してほしいか」を言語化し、評価基準と共に雇用契約書に明記する、もしくは試用期間についての覚書を用意するなどして、必ず書面で共有しましょう。

評価根拠を労働者発信のものにする
前提として、先に解説した評価基準を共有した上で、その評価を定期的に共有しましょう。
そのための方法として次のようなものが考えられます。

・業務日報、週報を根拠に、労働者の自己評価と使用者からの評価を共有する
・業務理解度を確認するテストを行い、その結果を根拠に労働者の自己評価と使用者からの評価を共有する

労働者が解雇理由に納得できない理由の一つは、解雇理由を「急に示された使用者からの一方的な評価」と受け取るためです。
これを回避するために、労働者発信の情報に基づき労働者の自己評価と使用者からの評価をリアルタイムかつ継続して共有することで、その先にある結論への納得度を高めることが期待できます。

労務管理がよりやりやすくなる

ここまでお伝えした通り、就業規則の作成が義務付けられない従業員10人未満の事業所においても就業規則を含む社内のルールを早くから作り上げていくことは、法律上義務付けられていないものの、事業を長く続けていくうえで不可欠な要素です。
ここからは、従業員10人未満の事業所が就業規則を作成するメリットをお伝えしていきます。

試用期間中の解雇が認められるケース

ここからは、試用期間中の解雇の理由が社会通念上相当であると判断され得るケースを、あくまで一例として紹介します。
これらに当てはまれば解雇が認められる、ではなく、解雇が認められる場合についての解釈・考え方への理解を深める観点でお読みください。

業務遂行に求められる能力が著しく不足している場合

先に紹介した試用期間中に求める能力や成果が不十分な場合であっても、結果にのみ着目すべきではなく、そのプロセスを含めて評価することが重要です。
また、結果を出せないことについて改善に向けた指導を重ねたものの、改善が期待できない場合に限られます。
なお、この考え方に基づくと、新卒採用や未経験採用の場合はそもそも即戦力が期待できないため、能力不足を理由とした解雇はまず認められないと考えましょう。

勤務態度が極めて不良な場合

無断欠勤や遅刻が連続し、能力不足の場合と同様に再三の指導によっても改善が期待できない場合に限られます。

職務に耐えられないほどの体調不良の場合

採用早々病欠が続くなど、雇用継続が困難となる体調不良の場合です。
例えば介護職での採用で、採用前から腰痛が常態化しており、採用後も度々業務が中断するようなケースを挙げます。この場合、可能な範囲で軽作業などへの転換を検討できれば望ましいですが、職種を限っての採用であることを考慮して、業務遂行が困難という合理的理由になる余地は大きいでしょう。

経歴や能力についての虚偽の申告があった場合

応募者の能力・職歴を評価し、それに見合う処遇にて採用したものの、その能力・職歴に偽りがあった場合です。
例えば、数年間のマネジメント経験が評価され、求人内容よりも高い給与で採用されたにもかかわらず、実際はマネジメントの補助程度の経験しかなかった、というような場合が挙げられます。
ここでのポイントは「相応の処遇を伴っている」点であって、そうでない場合は能力不足と同様に考えるのが妥当です。
また、未経験者採用の場合、その職種特有の業務については新卒採用と同様に即戦力は期待できません。しかし、社会人経験年数に相応の同僚との協調性や報連相について、著しい不足がある場合は解雇理由として検討の余地が残るでしょう。
そのほか、応募の前提となり選考時に申告した能力そのものを持ち合わせていない、例えばTOEIC900点台かつビジネス英会話が可能という条件の求人で、スコアも提出の上ビジネス英会話も問題ないと申告したにもかかわらず、実際は日常英会話もままならない、というようなケースが考えられます。

専門家への相談

解説のとおり、労務相談と一言でいっても参照すべき法令、問い合わせ先となる行政機関は多岐にわたります。聞き方が不十分でうまく伝わらなかった場合、問い合わせ先が間違っていないにもかかわらずほかの行政機関に誘導される可能性があり、最悪の場合たらい回しにもなりかねません。
そんなときに、これらの労務相談を一手に引き受けてくれるのが労務相談の専門家です。
(参考)雇用保険被保険者喪失届|ハローワークインターネットサービス

⑧・⑨定年制の状況


定年の有無、定年制度の改定・廃止予定の有無を記入します。

⑩・⑪雇用継続制度の状況


雇用継続制度の就業規則への記載有無、経過措置により雇用確保措置の上限年齢を限定している場合は上限年齢、経過措置の規定方法等を記入します。

⑫・⑬創業支援等措置


雇用ではない働き方の導入もしくは導入予定の有無、その内容を記入します。
(右ページ)

⑭65歳を超えて働ける制度


現状努力義務とされている65歳を超えて働ける制度の導入もしくは導入予定の有無、上限年齢、制度の規定方法等を記入します。

⑮常用労働者数


常用労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上の労働者であって、1年以上継続して雇用している、もしくは雇用が見込まれる労働者を指します。

⑯過去1年間の離職者の状況


45歳以上の労働者を解雇した場合、その人数を記入します。
求職活動支援書とは、事業主都合の解雇等、又は経過措置としての継続雇用制度の対象となる高年齢者にかかる基準に該当しなかったことによる離職予定の高年齢者等が希望した際に、対象労働者の職歴や業績等を記入のうえ作成・交付する書面です。

社会保険労務士(社労士)

社会保険労務士は、労働基準法をはじめとする労働関連法規の専門家であり、各種社会保険制度にも精通したスペシャリストです。加えて給与計算を併せて受け持つことの多い社会保険労務士は、人事労務担当者の頼れるパートナーです。
もちろん、社会保険労務士にも得意分野とそうでないものもあり、中には行政機関への問い合わせを要し相談内容に即答を得られない場合もあります。その場合も、まずは社会保険労務士へ相談することで行政機関窓口のたらい回しを回避できます。また、うまく説明できない相談も社会保険労務士が言語化して行政機関へ回答を求めてくれるため、いずれにしても労務相談の取りまとめ相談窓口として、社会保険労務士は心強い存在です。
社会保険労務士との契約は「労務相談」をベースに社会保険手続き、給与計算、就業規則などの作成、助成金の代行申請をオプションで加える形をとっているものが多いです。
また、労務相談の範囲もさまざまで、労働基準監督署に指摘されないよう法令遵守に限定した労務相談もあれば、社会保険手続きに関するものも含めた労務相談もあります。
一方で、社会保険労務士との顧問契約にあたって留意すべき点が、労働トラブルで裁判になった際、次に解説する弁護士のように事業主の代理人として法廷に立つことができない、という点です。裁判沙汰にならないよう、日頃から労務トラブルが起こらないように会社づくりをしていくことが社会保険労務士の業務の中心になります。
これから社会保険労務士との顧問契約を検討するにあたっては、上記の顧問契約の範囲などをしっかりと確認の上、進めていくことをおすすめします。

労働トラブルに強い弁護士

弁護士は、裁判で事業主の代理人として法廷に立つ心強い味方です。
同じ弁護士でも専門分野が分かれており、会社として顧問契約する場合は企業法務に強い弁護士であることが一般的です。また、企業法務を専門とする弁護士の場合、労働分野に特化しており労働トラブルにも強い場合が多くあります。
すでに顧問契約している弁護士がいる場合、以下の点について顧問契約の範囲内で可能であるか確認するとよいでしょう。
・社内の法務担当者のほか、人事労務担当者からの相談
・労務相談、労働トラブルへの対応
新たに顧問弁護士との顧問契約を検討する場合、顧問料と相談の上で労働分野にも強い弁護士と契約を結ぶことができれば、人事労務担当者の心強い味方になってくれます。
ただし、社会保険労務士とは異なり社会保険制度や手続きについては専門外であることがほとんどです。そのため、社会保険制度や社会保険手続き、給与計算は社内で問題なく実施できていることを前提とし、労務相談や法令について外部の相談窓口を求める場合、労働分野に強い弁護士は最適なパートナーとなります。

労務相談AIで対策は万全?

少し前に話題となったChatGPTを筆頭に、今日ではAIを導入した各種サービスメニューが充実しています。
これまでオペレーターとの電話が主流であった、携帯電話会社や生命保険会社、家電メーカーなどへの各種問い合わせも、まずはAIロボットが受付するシステムになっている会社が増えてきています。
そんなAIサービスにおいて、労務相談も例に漏れず、現在は社労士向けに労務相談の解決に役立つ法令や判例、周辺情報を提示してくれるAIサービスもリリースされています。
しかし、AIだけで労務相談が完結するわけではありません。AIの回答に専門的な知識が合わさって、よりスムーズに解決にたどり着く、というサービスモデルであることを理解しておく必要があります。
生成AIは日々急速に発展しており、精度も向上しているため、今後AIによる労務相談の精度も上がっていくことが期待できます。とはいえ、現状AIが苦手とする人間の感情を完全にカバーし、かつ過去の判例などを網羅し、99.9%の精度が約束されるまでにはまだ時間がかかるでしょう。
そのため、現状では困った時に頼りになる社会保険労務士、弁護士がいるというのがもっとも手っ取り早くかつ安心できる方法であると考えられますので、労務相談でお困りの場合はこれを機に専門家との顧問契約を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

就業規則は変更を繰り返していく必要があります。今回は、就業規則の変更手順、気を付けるべきポイントについて解説しました。
就業規則の作成、変更は関連する法律の理解が不十分な状態で行うと、従業員とのトラブルが発生したり、思わぬ不利益を被ったりと、事業主・人事労務担当者を悩ませるリスクが多く潜んでいます。
自社での対応が難しい、時間がかかる場合には一度社会保険労務士への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞く

就業規則を変更する場合には、作成する場合と同様に、過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞くことが必要です(労働基準法90条1項)。
職場の過半数の労働者から組織される労働組合のことを過半数労働組合といい、過半数労働組合がある場合には過半数労働組合から意見を聴取します。
職場に過半数労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する過半数代表者を選任して、意見を聴取します。
これらの意見の聴取をしたものについては、届出の際に意見書として提出することになります。
意見書は就業規則変更届と一緒に厚生労働省のホームページからダウンロードします。

就業規則変更届を提出する

就業規則変更届を提出します。
就業規則を変更した場合には、就業規則変更届を提出することになります。
就業規則変更届については、厚生労働省のホームページから取得できます。
参考:就業規則変更届|厚生労働省 ※Wordファイルがダウンロードされます
上述した過半数労働組合・過半数代表者の意見書もこのファイルの中にあります。

ひな形を使って良いのか

インターネットで検索をすれば容易に就業規則のひな方を入手することができます。
では、このひな形を使って就業規則を作成しても良いのでしょうか。
確かに、これらを利用すれば容易に作成でき、かつ絶対的必要記載事項についても記載を失念することは無いといえるでしょう。
しかし、上述したように、就業規則には業種ごとに作成にあたっての注意点があり、これらをひな形に適切に落とし込む必要があります。
また、会社ごとにひな形に記載されている文言を変更する必要がありますが、その内容が労働基準法等の法律に違反しないようにする必要があります。
ひな形を使う場合には、自社の事情にあっているか、法律に違反していないかなど、慎重に精査しましょう。

専門家への相談の要否

就業規則の作成について、専門家に相談する必要はあるのでしょうか。
就業規則は基本的な事項であり、慎重な作成が求められます。
作成にあたっては労働関係の法律についての知識が必要であり、その内容は非常に難解です。
そのため、できれば専門家に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

まとめ

このページではテレワーク・在宅勤務を導入する場合に就業規則をどうすれば良いかについてご紹介しました。
テレワーク・在宅勤務にあわせた就業規則が必要であり、過半数代表の同意や変更届の手続きも必要です。
どのような就業規則であればトラブルが発生しないかわからない、という場合には必ず専門家に相談することにしましょう。

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。

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