社会保険手続のアウトソーシングは誰に行う?メリット・デメリットなどについて確認

更新日:2024/8/23

社会保険

従業員が増えてくると負担となるのが人事に関する手続きです。 人事に関する手続きとして時間がかかる・特定の期間に業務が集中する・期限があるなどで特に負担となるのが、社会保険に関する手続きです。 この社会保険に関する手続きはアウトソーシングが可能なのですが、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。 本記事では、社会保険手続きのアウトソーシングについてお伝えします。

社会保険手続のアウトソーシングは誰に行う?

社会保険手続きのアウトソーシングは誰に行うのでしょうか。

社会保険手続のアウトソーシングは誰に行う

社会保険手続のアウトソーシングは誰に行うことができるのでしょうか。
社会保険手続のような法的手続については、弁護士法72条で法律の例外がない限り、報酬を得て行うことができるのは弁護士のみとされています。
そして、弁護士法72条の例外として、社会保険労務士法が規定されており、社会保険手続きに関する事務の代行をすることができ、実際には社会保険労務士が行っています。

どのような手続きをアウトソーシングできる?

社会保険労務士には次のような手続きを委託することができます。

健康保険・厚生年金に関する手続き


健康保険・厚生年金に関する手続きとしては次のものがあります。
被保険者資格取得届・被保険者資格喪失届・被扶養者異動届・第3号被保険者資格取得届・算定基礎届・月額変更届・賞与支払届・各種健康保険手続き(産休・育休届出など)・適用事業所届出関係など

労災保険に関する手続き


労災保険に関する手続きとしては次のものがあります。
療養補償給付手続き・被保険者資格喪失届・障害補償給付手続き・傷病補償年金給付の手続き・第三者行為災害届・二次健康診断給付の手続き・労働保険料申告手続き

雇用保険に関する手続き


雇用保険に関する手続きとしては次のものがあります。
被保険者資格取得届・高年齢雇用継続給付申請・育児休業給付申請・介護休業給付申請

社会保険手続きをアウトソーシングするメリット・デメリット

社会保険手続きをアウトソーシングすることにはメリットとデメリットがあるので確認しておきましょう。

社会保険手続きをアウトソーシングするメリット

まず社会保険手続きをアウトソーシングするメリットとしては次のようなものが挙げられます。

複雑かつ頻繁に改正される社会保険手続きを確実に行ってもらえる


複雑かつ頻繁に改正される社会保険手続きを確実に行ってもらえるというメリットがあります。
社会保険に関する法律・手続きは非常に複雑でありながら、手続きの不備によって刑事罰や会社名の公表などによる企業イメージの低下など、その不利益は重大です。
そのため、確実に行う必要があります。
しかも、他の法律に比べると頻繁に改正されるため、人事の担当者は常時法令の勉強が欠かせません。
社会保険手続きをアウトソーシングすることで、複雑かつ頻繁に改正される社会保険手続きを確実に行ってもらえます。

本来の業務に集中できる


本来の業務に集中することができるというメリットがあります。
小規模な会社の場合、会社代表者や、他の業務を持っている社員が人事に関する業務を行っていることがあります。
年末調整のように社会保険手続きは一度に集中することがあり、これに忙殺されると本来の業務に注力できないことがあります。
社会保険手続きをアウトソーシングすることで、本来の業務に集中することができるといえます。

コストを削減できる場合がある


コストを削減することができる場合がある、というメリットがあります。
人事に関する業務が圧迫してくるようになったときに、他の業務についている人に担当してもらう、新たに人事を担当する人を採用するなどでコストがかかります。
社会保険手続きをアウトソーシングすることでコストがかかるのですが、双方のコストを比べるとアウトソーシングするほうがコストを削減できる場合があります。
労働者負担雇用主負担雇用保険料率
一般の事業5/10008.5/100013.5/1000
農林水産・清酒製造の事業6/10009.5/100015.5/1000
建設の事業6/100010.5/100016.5/1000

社会保険手続きをアウトソーシングするデメリット

一方で社会保険手続きをアウトソーシングすることには次のようなデメリットもあります。

セキュリティの問題が発生する


社会保険手続きのアウトソーシングをすることは、労働者の個人情報を持ち出すことになります。
そのため、セキュリティの問題が発生します。
アウトソーシング先が個人情報をどのように取り扱っているのかを慎重に見極める必要があります。
なお、情報漏洩について、社会保険労務士に違反すると刑事罰が課される守秘義務が課されており(社会保険労務士法21条・32条の2)、一般的な事務作業のアウトソーシングに比べると安全であるといえます。

社内にノウハウが蓄積されない


手続きを自社で行っていれば、担当者や部署がノウハウを蓄積することが期待できます。
しかし、アウトソーシングしてしまうと、このようなノウハウの蓄積ができなくなってしまいます。
いずれ社内で内製化する可能性がある場合には、アウトソーシング先が受託した業務についてどのような報告をしているかを確認して、ノウハウの蓄積ができるようなアウトソーシング先を選びましょう。

産休・育休に関するペナルティ

産休・育休を請求したにもかかわらず、休業をさせなかった場合、懲戒処分や解雇をした場合には次のようなペナルティがあります。

産休に関する刑事罰


産休についての労働基準法65条に違反した場合のペナルティとして、労働基準法119条1号で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が規定されています。
産休の請求をしても与えない、産後休業の期間に働かせた場合には刑事罰に処せられる可能性があります。

解雇制限等に違反した場合のペナルティ


65条所定の期間、その後30日に解雇をした場合、その解雇は無効とされます(労働基準法19条)。
その規定に違反して解雇を行った場合には、労働基準法119条1号で同じく6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が規定されています。
また、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下:男女雇用機会均等法)9条3項は、労働基準法65条所定の産休・育休を申請したことを理由とする解雇等の不利益処分を禁じています。
男女雇用機会均等法違反の場合、違反の事実を公表することができる旨が規定されています(男女雇用機会均等法30条)。

行政指導の対象となる


産休・育休に関する規定に違反した場合、労働基準監督署から立ち入りや報告を求められるなどの行政指導を受けることがあります。

民事上の責任追及


産休・育休に関する規定に違反して労働者に不利益を与えた場合や、解雇をしてしまって違法解雇と評価される場合、労働者から慰謝料請求などの民事上の責任追及を受ける可能性があります。

社会保険手続きをアウトソーシングする場合の注意点

社会保険手続きをアウトソーシングする場合にはどのような注意が必要でしょうか。

アウトソーシングの実績を確認する

社会保険のアウトソーシングの実績を確認しましょう。
社会保険は上述したように法令が複雑で頻繁に改正が行われるので、専門的な知識・ノウハウが欠かせません。
実績がある社会保険労務士であれば優れた専門知識やノウハウが期待できます。
実績は社会保険労務士のホームページや口コミを確認して行いましょう。

どの範囲で業務を依頼できるかを確認する

どの範囲で業務を依頼できるかを確認しましょう。
人事に関しては社会保険の他にも給与計算のような業務も発生します。
複雑な社会保険のアウトソーシングだけ、給与計算までまるごとアウトソーシングしたい、などどの範囲で業務を依頼できるのかをしっかり比べて、会社の目的に沿ったアウトソーシングができるかを確認しましょう。

費用を比べる

アウトソーシングにかかる費用を確認しましょう。
報酬の設定は自由なので、同じような業務を依頼する場合でも高い・安いという差が発生することがあります。
どのような業務を任せることができるかとあわせて報酬の額を比較することで、かかるコストと節約できるコストを比較することができます。

電子申請・ITなどへの対応力

電子申請やITなどに対応しているかどうかを確認しましょう。
昨今では役所への申請について、電子申請が行えるようになっており、直接役所や労働基準監督署に行かなくても行えるようになりました。
このような電子申請やITツールへの対応をしているかどうかは、アウトソーシングをするにあたっての判断材料となるといえます。

賃金と手当

賃金・手当についてはテレワーク・在宅勤務でもきちんと定めることになります。
テレワーク・在宅勤務と通勤を組み合わせるような場合には、通勤手当の負担をどのようにするかはきちんと明記する必要があります。
通常の勤務からテレワーク・在宅勤務に移行する際、基本給を減ずることは、労働条件の不利益変更になるので基本的に行うことができません。
また、会社の所在地の都道府県の最低賃金を下回らないこと(最低賃金法4条)にも注意が必要です。

費用負担

従業員の費用負担について定めます。
在宅勤務をする場合、インターネット回線の契約や水道光熱費などの負担が発生します。これらの負担については、労働基準法89条5号で定める必要があるとされており、記載が不可欠となります。
これらの費用負担に対応するための手当てを支給する場合には、その手当ての内容についてもきちんと記載するようにしましょう。

端末の貸与と私有機器の利用について

セキュリティや勤怠管理の観点から、使用するパソコンや端末については会社から貸与したもののみ利用を許可するのが望ましいでしょう。
そのため、パソコン・携帯電話・スマートフォンの貸与や、使用料金の支払いについての規定をします。
また、パソコンやスマートフォンに、会社の許可を得ずにソフト・アプリをインストールすることを禁ずることを規定します。
さらに、私用機器の利用を認める場合の要件や、利用についての届け出などの手続き方法についても規定するのが良いでしょう。

その他

その他の事項としては、次のようなものが記載されます。

  • 教育訓練

  • 安全衛生

  • ハラスメント防止

記載の方法

なお、テレワーク・在宅勤務の就業規則を記載する場合、テレワークに関する就業規則を別途作成するか、就業規定に新たな項目を設けて作成するという方法が取られます。
テレワークモデル就業規則作成の手引きでは、分かりやすさという観点から、新たに作成することが推奨されています。
36協定に関する違反をした場合にもペナルティがあります。
上述の行政指導はもちろん、労働基準法119条1号で労働基準法36条6項に違反した場合の刑事罰も同様に定められています。
労働時間に関する会社名で報道されているものの多くが、36協定に違反しての長時間残業なので、やはり違反をしないように細心の注意が必要であるといえます。

まとめ

このページでは、社会保険手続きのアウトソーシングについてお伝えしました。
採用する人が増えてくると人事への負担が増えるため、その対応が必要です。
社会保険手続きのアウトソーシングは、負担の軽減というメリットなどがありますが、ノウハウの蓄積ができないというデメリットもあります。
利用を検討すべきかどうかも含めて社会保険労務士など専門家に相談してみましょう。

過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞く

就業規則を変更する場合には、作成する場合と同様に、過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞くことが必要です(労働基準法90条1項)。
職場の過半数の労働者から組織される労働組合のことを過半数労働組合といい、過半数労働組合がある場合には過半数労働組合から意見を聴取します。
職場に過半数労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する過半数代表者を選任して、意見を聴取します。
これらの意見の聴取をしたものについては、届出の際に意見書として提出することになります。
意見書は就業規則変更届と一緒に厚生労働省のホームページからダウンロードします。

就業規則変更届を提出する

就業規則変更届を提出します。
就業規則を変更した場合には、就業規則変更届を提出することになります。
就業規則変更届については、厚生労働省のホームページから取得できます。
参考:就業規則変更届|厚生労働省 ※Wordファイルがダウンロードされます
上述した過半数労働組合・過半数代表者の意見書もこのファイルの中にあります。

ひな形を使って良いのか

インターネットで検索をすれば容易に就業規則のひな方を入手することができます。
では、このひな形を使って就業規則を作成しても良いのでしょうか。
確かに、これらを利用すれば容易に作成でき、かつ絶対的必要記載事項についても記載を失念することは無いといえるでしょう。
しかし、上述したように、就業規則には業種ごとに作成にあたっての注意点があり、これらをひな形に適切に落とし込む必要があります。
また、会社ごとにひな形に記載されている文言を変更する必要がありますが、その内容が労働基準法等の法律に違反しないようにする必要があります。
ひな形を使う場合には、自社の事情にあっているか、法律に違反していないかなど、慎重に精査しましょう。

専門家への相談の要否

就業規則の作成について、専門家に相談する必要はあるのでしょうか。
就業規則は基本的な事項であり、慎重な作成が求められます。
作成にあたっては労働関係の法律についての知識が必要であり、その内容は非常に難解です。
そのため、できれば専門家に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

まとめ

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。

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