ストレスチェックとは?就業規則に記載する必要はある?

更新日:2024/8/22

就業規則

労使関係において最近会社の義務とされたものとしてストレスチェックが挙げられます。 このストレスチェックは現在法律で義務化されており、適切に行わないとペナルティがあるため注意が必要です。 本記事では、ストレスチェックと就業規則との関係についてご紹介します。

ストレスチェックとは

まず、ストレスチェックとはどのようなものか確認しましょう。

ストレスチェックとは

ストレスチェックとは、労働安全衛生法66条の10に定められている医師等による心理的な負担の程度を把握するための検査のことをいいます。
「労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な職場環境の形成を促進する」という労働安全衛生法の目的(労働安全衛生法1条)を達成するため、従業員の心理的負担を把握し、対策を義務づけるための行われるものです。
なお、令和6年5月現在は常時50人以上の労働者を使用する事業場者においてのみ義務とされていて、50人未満の場合には任意とされています。
ストレスチェックの実施については民間の会社がストレスチェックの実施サービスを展開しているほか、厚生労働省が無料でストレスチェックの実施のためのプログラムを制作して公開しています。
参考:「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト

ストレスチェックの義務化

ストレスチェックは、平成27年12月の改正労働安全衛生法の施行によって導入されました。
その背景には平成21年度には234件であった精神障害の労災認定件数が平成22年度には308件、平成25年度には475件と、3年連続で増加し、社会問題化していたことにあります。
平成26年6月25日に公布された「労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成26年法律第82号)」に導入され、平成27年12月1日より施行されています。

ストレスチェックを行わなかった場合のペナルティ

ストレスチェックを行わなかった場合、民事・行政・刑事にわたってペナルティがある可能性があります。
まず、ストレスチェックを行わなかったことで従業員の心理的負担を会社が把握できず精神疾患などを発症した場合、労働契約法5条に規定する安全配慮義務違反として、損害賠償義務を負う可能性が高いとされています。
また、労働基準監督署より行政指導が行われる可能性があります。
ストレスチェックを行わなかったことによって会社・代表者を直接処罰する規定はありません。
しかし労働安全衛生法100条に基づいて労働基準監督署から報告を求められたにもかかわらず、報告をしない・虚偽の報告をした、という場合には、労働安全衛生法120条5号で50万円以下の罰金刑が規定されています。
労働者負担雇用主負担雇用保険料率
一般の事業5/10008.5/100013.5/1000
農林水産・清酒製造の事業6/10009.5/100015.5/1000
建設の事業6/100010.5/100016.5/1000

ストレスチェックを実施する流れ

ストレスチェックを実施する流れとして、厚生労働省が定めている「心理的な負担の程度を把握するための検査及び面接指導の実施並びに面接指導結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」(ストレスチェックチェック指針)において、ストレスチェック実施の手順について次のように定められています。




ア 基本方針の表明
事業者は、法、規則及び本指針に基づき、ストレスチェック制度に関する基本方針を表明する。
イ ストレスチェック及び面接指導
① 衛生委員会等において、ストレスチェック制度の実施方法等について調査審議を行い、その結果を踏まえ、事業者がその事業場におけるストレスチェック制度の実施方法等を規程として定める。
② 事業者は、労働者に対して、医師、保健師又は厚生労働大臣が定める研修を修了した看護師若しくは精神保健福祉士(以下「医師等」という。)によるストレスチェックを行う。
③ 事業者は、ストレスチェックを受けた労働者に対して、当該ストレスチェックを実施した医師等(以下「実施者」という。)から、その結果を直接本人に通知させる。
④ ストレスチェック結果の通知を受けた労働者のうち、高ストレス者として選定され、面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者から申出があった場合は、事業者は、当該労働者に対して、医師による面接指導を実施する。
⑤ 事業者は、面接指導を実施した医師から、就業上の措置に関する意見を聴取する。
⑥ 事業者は、医師の意見を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。
ウ 集団ごとの集計・分析
① 事業者は、実施者に、ストレスチェック結果を一定規模の集団ごとに集計・分析させる。
② 事業者は、集団ごとの集計・分析の結果を勘案し、必要に応じて、適切な措置を講じる。


ストレスチェックを行った上で、高ストレス者として選定された従業員からの申し出があった場合には、医師による面接指導を実施する必要があります。
その上で医師の意見を勘案して従業員に対して適切な措置を講じるほか、集団ごとの集計・分析結果を勘案し、職場状況の改善に向けた必要な措置をとることが定められています。

ストレスチェックと就業規則との関係

ストレスチェック制度について就業規則との関係で問題となることはあるのでしょうか。

ストレスチェックに関することは就業規則に記載する義務はあるのか

ストレスチェックに関することは就業規則に記載する義務はあるのでしょうか。
就業規則に記載する義務がある事項については、労働基準法89条に定められており、ストレスチェックに関する事項はこれに含まれません。
そのため、就業規則に記載の義務はないといえます。

ストレスチェックについて就業規則に記載する場合

ストレスチェックについては就業規則に記載する義務はないものの、ストレスチェックが始まった平成27年以降もパワハラ防止法など、従業員が働きやすい環境を作るための法整備が進んでいます。
その結果、ストレスチェックに関する事項について就業規則で定める必要に迫られる可能性があります。
またストレスチェックの結果、高ストレスと判断された従業員については配置転換をしたり、労働時間を制限するなどして、待遇に影響する可能性もあります。
そのため、就業規則に定めることが望ましいといえ、厚生労働省のモデル就業規則でも下記のような項目が規定されています。




(ストレスチェック)
第59条  労働者に対しては、毎年1回、定期に、医師、保健師等による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行う。
2 前項のストレスチェックの結果、ストレスが高く、面接指導が必要であると医師、保健師等が認めた労働者に対し、その者の申出により医師による面接指導を行う。
3 前項の面接指導の結果必要と認めるときは、就業場所の変更、作業の転換、労働時間の短縮、深夜業の回数の減少等、必要な措置を命ずることがある。


ほかにも、次のようなことを記載することが考えられます

  • ストレスチェックを実施する担当者・実施者などの実施体制について

  • ストレスチェックの実施の時期・対象者・実施方法・通知方法など

  • 医師による面接指導の申し出の方法や実施方法など

  • ストレスチェックに関する情報について、結果の共有範囲などの管理方法

  • 受診前後の従業員の不利益となる行為や不当な配置転換などを行わないこと

服務規律

テレワークで就業するにあたっての規律である服務規律について記載します。
特にテレワークをする際には、会社からの資料の持ち出しについて、自宅・サテライトオフィスなど以外の場所で業務をしない、モバイル勤務である場合には会社から貸与しているパソコン以外を利用したりしないように適切な規定を置く必要があります。
次のような記載がモデル就業規則に挙げられています。




(2)在宅勤務の際に所定の手続に従って持ち出した会社の情報及び作成した成果物を第三者が閲覧、コピー等しないよう最大の注意を払うこと。
(3)第2号に定める情報及び成果物は紛失、毀損しないように丁寧に取扱い、セキュリティガイドラインに準じた確実な方法で保管・管理しなければならないこと。
(4)在宅勤務中は自宅以外の場所で業務を行ってはならないこと。
(5)モバイル勤務者は、会社が指定する場所以外で、パソコンを作動させたり、重要資料を見たりしてはならないこと。
(6)モバイル勤務者は、公衆無線LANスポット等漏洩リスクの高いネットワークへの接続は禁止すること。


会社外への情報の持ち出しが発生するような場合には、セキュリティガイドラインの策定なども併せて行う必要があるでしょう。

労働時間についての記載

労働時間についての記載を行います。
在宅勤務をするからといって労働時間について何も定めなくても良い、いつでも対応できるようにしなければならない、というわけではなく、きちんと労働時間を定める必要があります。
通常の1日8時間・週40時間を上限とする労働基準法32条や残業についての規定はテレワーク・在宅勤務でも適用されます。
また、残業についての労働基準法36条などの規定も同様に適用されることになります。
フレックスタイム制、事業場外みなし労働時間制、裁量労働制などを併せて採用することもあり、この場合もそれぞれの労働時間に関する法律の規定を遵守する必要があります。
特に、事業所外みなし労働時間制を採用するには、「使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定することが困難」といえる場合でなければなりません。
そのため、次の2要件を満たす必要があります。




①パソコンやスマートフォンが使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
②当該業務が随時使用者の具体的な指示に基づいて行われていないこと


労働時間と併せて、休憩についての規定もきちんと規定しておきましょう。
テレワーク・在宅勤務をする場合に、通常の労働時間制ではない労働時間に関する定めを置く場合には、労働時間に関する法令順守がきちんとできているかを専門家に確認してもらうことをおすすめします。

勤務時間の管理の方法

勤務時間の管理についても記載が必要です。
勤務時間の管理は、通常の勤務と同様に給与計算のための労働時間の把握に必要なほか、労働安全衛生法に基づく措置として把握する必要があります。
特にテレワーク・在宅勤務では、在席してきちんと執務をしているかを確認するために、テレワーク・在宅勤務をしている人が会社にいる場合でも使いやすいクラウドでの勤怠管理ツールを利用することがあります。
これらを使った勤怠管理をすることを明記します。
また、育児・介護のためにテレワーク・在宅勤務をしているような場合、勤務時間中に中抜けをすることもあるでしょう。
中抜けをする場合の措置についてもきちんと把握し管理できるようにする必要があります。

賃金と手当

賃金・手当についてはテレワーク・在宅勤務でもきちんと定めることになります。
テレワーク・在宅勤務と通勤を組み合わせるような場合には、通勤手当の負担をどのようにするかはきちんと明記する必要があります。
通常の勤務からテレワーク・在宅勤務に移行する際、基本給を減ずることは、労働条件の不利益変更になるので基本的に行うことができません。
また、会社の所在地の都道府県の最低賃金を下回らないこと(最低賃金法4条)にも注意が必要です。

費用負担

従業員の費用負担について定めます。
在宅勤務をする場合、インターネット回線の契約や水道光熱費などの負担が発生します。これらの負担については、労働基準法89条5号で定める必要があるとされており、記載が不可欠となります。
これらの費用負担に対応するための手当てを支給する場合には、その手当ての内容についてもきちんと記載するようにしましょう。

端末の貸与と私有機器の利用について

セキュリティや勤怠管理の観点から、使用するパソコンや端末については会社から貸与したもののみ利用を許可するのが望ましいでしょう。
そのため、パソコン・携帯電話・スマートフォンの貸与や、使用料金の支払いについての規定をします。
また、パソコンやスマートフォンに、会社の許可を得ずにソフト・アプリをインストールすることを禁ずることを規定します。
さらに、私用機器の利用を認める場合の要件や、利用についての届け出などの手続き方法についても規定するのが良いでしょう。

その他

その他の事項としては、次のようなものが記載されます。

  • 教育訓練

  • 安全衛生

  • ハラスメント防止

記載の方法

なお、テレワーク・在宅勤務の就業規則を記載する場合、テレワークに関する就業規則を別途作成するか、就業規定に新たな項目を設けて作成するという方法が取られます。
テレワークモデル就業規則作成の手引きでは、分かりやすさという観点から、新たに作成することが推奨されています。
36協定に関する違反をした場合にもペナルティがあります。
上述の行政指導はもちろん、労働基準法119条1号で労働基準法36条6項に違反した場合の刑事罰も同様に定められています。
労働時間に関する会社名で報道されているものの多くが、36協定に違反しての長時間残業なので、やはり違反をしないように細心の注意が必要であるといえます。

まとめ

このページではストレスチェックとはどのようなものか、および就業規則との関係についてお伝えしました。
50人以上の労働者を雇用している場合には行う法的義務があり、これに違反すると行政指導や刑事罰につながるおそれがあるため注意が必要です。
就業規則への記載方法や、ストレスチェックを巡る問題については、専門家に相談してみるようにしましょう。

過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞く

就業規則を変更する場合には、作成する場合と同様に、過半数労働組合もしくは過半数代表の意見を聞くことが必要です(労働基準法90条1項)。
職場の過半数の労働者から組織される労働組合のことを過半数労働組合といい、過半数労働組合がある場合には過半数労働組合から意見を聴取します。
職場に過半数労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表する過半数代表者を選任して、意見を聴取します。
これらの意見の聴取をしたものについては、届出の際に意見書として提出することになります。
意見書は就業規則変更届と一緒に厚生労働省のホームページからダウンロードします。

就業規則変更届を提出する

就業規則変更届を提出します。
就業規則を変更した場合には、就業規則変更届を提出することになります。
就業規則変更届については、厚生労働省のホームページから取得できます。
参考:就業規則変更届|厚生労働省 ※Wordファイルがダウンロードされます
上述した過半数労働組合・過半数代表者の意見書もこのファイルの中にあります。

ひな形を使って良いのか

インターネットで検索をすれば容易に就業規則のひな方を入手することができます。
では、このひな形を使って就業規則を作成しても良いのでしょうか。
確かに、これらを利用すれば容易に作成でき、かつ絶対的必要記載事項についても記載を失念することは無いといえるでしょう。
しかし、上述したように、就業規則には業種ごとに作成にあたっての注意点があり、これらをひな形に適切に落とし込む必要があります。
また、会社ごとにひな形に記載されている文言を変更する必要がありますが、その内容が労働基準法等の法律に違反しないようにする必要があります。
ひな形を使う場合には、自社の事情にあっているか、法律に違反していないかなど、慎重に精査しましょう。

専門家への相談の要否

就業規則の作成について、専門家に相談する必要はあるのでしょうか。
就業規則は基本的な事項であり、慎重な作成が求められます。
作成にあたっては労働関係の法律についての知識が必要であり、その内容は非常に難解です。
そのため、できれば専門家に相談しておくのが望ましいといえるでしょう。

まとめ

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。

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