就業規則とはどのようなもの?法律ではどのような規定がされているのか
更新日:2023/08/30
会社で従業員を雇用する際に必要となるのが「就業規則」ですが、就業規則に関する詳しい内容についてきちんと把握していますか? 就業規則は労働基準法上では非常に重要なもので、不備によって最悪のケースでは罰が課される可能性のあるものです。 そこでこのページでは、就業規則とはどのようなものか、法律ではどのような規定がされているのかについてお伝えします。
就業規則とは?
就業規則とはどのようなものか確認しましょう。
就業規則とは
就業規則とは、労働者の賃金や労働時間などの労働条件に関すること、職場内の規律などについて定めた職場における規則集のことを言います(厚生労働省のリーフレット https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/dl/140811-4.pdf)より。
会社における労使関係の基本的な事項を定めるもので、よく「会社の憲法」と呼ばれることがあります。
労使間のトラブル発生を防止し、従業員のモラルやモチベーション維持のために欠かせず、重要なものであるといえます。
就業規則を作成すべき義務はどのような場合に発生するか
就業規則は、常時10人以上の労働者を使用する使用者が作成する義務があります(労働基準法89条)。
なお、単位は事業所単位であるとされており、一つの事業所に10人以上雇用する場合に就業規則の作成義務があります。
なお、単位は事業所単位であるとされており、一つの事業所に10人以上雇用する場合に就業規則の作成義務があります。
就業規則を作成していないとどのようなペナルティがあるのか
常時10人以上の労働者を使用しているにもかかわらず、就業規則を作成していない場合には、次の2つのペナルティがあります。
一つは、労働基準法違反となるので、労働基準監督署から行政指導を受けるというペナルティを課せられる可能性があります。
事業所に立ち入りをされたり、労働基準監督所に報告する義務を負うことになったりします。
また、労働基準法120条1号によって、30万円以下の罰金刑となる可能性があります。
一つは、労働基準法違反となるので、労働基準監督署から行政指導を受けるというペナルティを課せられる可能性があります。
事業所に立ち入りをされたり、労働基準監督所に報告する義務を負うことになったりします。
また、労働基準法120条1号によって、30万円以下の罰金刑となる可能性があります。
作成した就業規則は届出と周知することが必要
作成した就業規則は届出および備え置き、周知が必要です。
まず、常時10人以上の労働者を使用するに至り、就業規則を作成した場合には労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法89条)。
作成した就業規則を変更する場合にも届出をする義務があるので注意してください。
作成した就業規則については、見やすいところに掲示する、備え付けるなどの方法によって周知する必要があります(労働基準法106条)。
労働基準法106条に違反した場合にも、労働基準法120条1号で30万円以下の罰金刑となる可能性があります。
まず、常時10人以上の労働者を使用するに至り、就業規則を作成した場合には労働基準監督署に届け出る義務があります(労働基準法89条)。
作成した就業規則を変更する場合にも届出をする義務があるので注意してください。
作成した就業規則については、見やすいところに掲示する、備え付けるなどの方法によって周知する必要があります(労働基準法106条)。
労働基準法106条に違反した場合にも、労働基準法120条1号で30万円以下の罰金刑となる可能性があります。
就業規則と労働契約との関係
就業規則と労働契約はどのような関係にあるのでしょうか。
労働契約とは、使用者と労働者との間でする労働に関する契約のことをいいます。
労働者を雇用するときには、労働契約を結びます。
そのため、労働契約で定めた内容と、就業規則で定めた内容が同時に存在することになります。
そこで、労働契約と就業規則が別のことを定める以上、両者の関係が問題になります。
労働基準法93条は、労働契約法12条で定めるところによると規定しており、労働契約法12条では、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約については無効であり、無効となった部分については就業規則で定める内容となるとしています。
例えば、就業規則で休憩時間を60分と定めているにも関わらず、労働契約で休憩時間を45分と定めた場合、休憩時間を45分と定める規定については無効であり、休憩時間は60分とされます。
労働契約とは、使用者と労働者との間でする労働に関する契約のことをいいます。
労働者を雇用するときには、労働契約を結びます。
そのため、労働契約で定めた内容と、就業規則で定めた内容が同時に存在することになります。
そこで、労働契約と就業規則が別のことを定める以上、両者の関係が問題になります。
労働基準法93条は、労働契約法12条で定めるところによると規定しており、労働契約法12条では、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約については無効であり、無効となった部分については就業規則で定める内容となるとしています。
例えば、就業規則で休憩時間を60分と定めているにも関わらず、労働契約で休憩時間を45分と定めた場合、休憩時間を45分と定める規定については無効であり、休憩時間は60分とされます。
就業規則に記載すること
就業規則にはどのようなことを記載するのでしょうか。
絶対的必要記載事項
就業規則には記載しなければならないとされる事項が、労働基準法89条に規定されています。
この記載事項のことを、絶対的必要記載事項と呼んでいます。
絶対的必要記載事項としては次の事項が法定されています。
就業規則に絶対的必要記載事項を欠いている場合には、作成・届出をしても労働基準法89条所定の就業規則を作成したことにならず、行政指導・罰則の対象になり得るので注意しましょう。
この記載事項のことを、絶対的必要記載事項と呼んでいます。
絶対的必要記載事項としては次の事項が法定されています。
- 始業時刻・終業時刻
- 休憩時間・休日・休暇
- 労働者を2組以上に分けて交代に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
- 賃金の決定・計算・支払方法
- 賃金の締め切り及び支払いの時期
- 昇給に関する事項
- 退職に関する事項
- 退職手当を定める場合に、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算、支払い方法、支払い時期に関する事項
就業規則に絶対的必要記載事項を欠いている場合には、作成・届出をしても労働基準法89条所定の就業規則を作成したことにならず、行政指導・罰則の対象になり得るので注意しましょう。
相対的必要記載事項
上述した以外に特定の定めをする場合には就業規則に記載しなければならない事項のことを、相対的必要記載事項と呼んでおり、同じく労働基準法89条に規定されています。
安全・衛生についての定め、災害補償や業務外の疾病扶助、従業員に懲戒処分をするための制裁の定めについては、ほとんどの就業規則で記載する事項です。
- 臨時の賃金等及び最低賃金額の定めをする場合にはこれに関する事項
- 労働者に食費・作業用品その他の負担をさせる場合にはこれに関する事項
- 安全・衛生に関する定めをする場合にはこれに関する事項
- 職業訓練に関する定めをする場合にはこれに関する事項
- 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合にはこれに関する事項
- 表彰及び制裁の定めをする場合にはその種類及び程度に関する事項
- 当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合にはこれに関する事項
- 退職手当の定めをする場合にはこれに関する事項
安全・衛生についての定め、災害補償や業務外の疾病扶助、従業員に懲戒処分をするための制裁の定めについては、ほとんどの就業規則で記載する事項です。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項および相対的記載事項以外の事項の記載のことをいいます。
就業規則は会社に関するルールを記載して、労使のトラブルを少なくするためのものなので、トラブル防止のために記載しておくと良い事項に関しては記載するのが良いでしょう。
よく記載される事項として次のものが挙げられます。
安全・衛生についての定め、災害補償や業務外の疾病扶助、従業員に懲戒処分をするための制裁の定めについては、ほとんどの就業規則で記載する事項です。
就業規則は会社に関するルールを記載して、労使のトラブルを少なくするためのものなので、トラブル防止のために記載しておくと良い事項に関しては記載するのが良いでしょう。
よく記載される事項として次のものが挙げられます。
- 就業規則の基本精神
- 応募・採用に関する事項
- 副業・競業に関する事項
安全・衛生についての定め、災害補償や業務外の疾病扶助、従業員に懲戒処分をするための制裁の定めについては、ほとんどの就業規則で記載する事項です。
就業規則の作成・変更で知っておくこと
就業規則の作成・変更について知っておくべきこととして次のようなことがあります。
就業規則は10人雇用する前から作成しておくのが望ましい
就業規則は、法律上は10人雇用時に作成・届出をしている必要があります。
しかし、例えば7人雇用している段階で業務が急拡大したため、あと4人雇用したい、となった場合に、まずは就業規則を作成して届出してから雇用をしなければならないため、煩雑で時期を逃す可能性もあります。
また、すでに雇用している従業員との関係でも雇用に関するルールを明確にして労使トラブルを防止し、モラル・モチベーションの維持をすることが望ましいともいえます。
そのため、就業規則は10人雇用前からでも作成することが望ましいといえます。
しかし、例えば7人雇用している段階で業務が急拡大したため、あと4人雇用したい、となった場合に、まずは就業規則を作成して届出してから雇用をしなければならないため、煩雑で時期を逃す可能性もあります。
また、すでに雇用している従業員との関係でも雇用に関するルールを明確にして労使トラブルを防止し、モラル・モチベーションの維持をすることが望ましいともいえます。
そのため、就業規則は10人雇用前からでも作成することが望ましいといえます。
厚生労働省のモデル就業規則を使う
就業規則を作成するにあたって、ひな形の利用を検討している場合には、厚生労働省が作成しているモデル就業規則を利用しましょう。
モデル就業規則について|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html)
基本的な事項が記載されているほか、実情に応じて随時改定もされていますので(最新改定:令和5年7月)、最も信頼できるといえます。
ただし、厚生労働省が作成しているモデル就業規則はあくまで最低限のことしか記載しておらず、個々の企業を念頭に作成されているものではありません。
そのまま自社の就業規則として使用した場合、会社が著しい不利益を受ける場合や、大きな労使トラブルになる可能性もあります。
自社の実情に合っているかは、専門家に相談するなど慎重に検討すべきといえるでしょう。
モデル就業規則について|厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/index.html)
基本的な事項が記載されているほか、実情に応じて随時改定もされていますので(最新改定:令和5年7月)、最も信頼できるといえます。
ただし、厚生労働省が作成しているモデル就業規則はあくまで最低限のことしか記載しておらず、個々の企業を念頭に作成されているものではありません。
そのまま自社の就業規則として使用した場合、会社が著しい不利益を受ける場合や、大きな労使トラブルになる可能性もあります。
自社の実情に合っているかは、専門家に相談するなど慎重に検討すべきといえるでしょう。
就業規則の不利益変更の禁止
就業規則を不利益に変更して、従来の労働者の労働条件や福利厚生が不利益を被ることがあります。
このような事例について、秋北バス事件(最高裁判所判決昭和43年12月25日)で、「使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されない」としました。
ただし、「当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべき」と判示しました。
つまり、就業規則によって不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則としては禁止されていますが、
変更した就業規則が合理的なものである場合には、その適用は拒むことは許されないとして、不利益変更ができるとしました。
この判例の内容が、後に労働契約法9条で「労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と規定しました。
そして、例外として労働契約法10条は「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と規定しました。
以上のように、就業規則を不利益に変更する場合には、慎重な判断と会社での調整が必要となるので、作成時から気をつけるべきであるといえます。
このような事例について、秋北バス事件(最高裁判所判決昭和43年12月25日)で、「使用者が、あらたな就業規則の作成または変更によって、労働者の既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として、許されない」としました。
ただし、「当該規則条項が合理的なものであるかぎり、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないと解すべき」と判示しました。
つまり、就業規則によって不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則としては禁止されていますが、
変更した就業規則が合理的なものである場合には、その適用は拒むことは許されないとして、不利益変更ができるとしました。
この判例の内容が、後に労働契約法9条で「労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」と規定しました。
そして、例外として労働契約法10条は「使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。」と規定しました。
以上のように、就業規則を不利益に変更する場合には、慎重な判断と会社での調整が必要となるので、作成時から気をつけるべきであるといえます。
まとめ
このページでは、就業規則についてお伝えしました。
法律上は10名以上の従業員を雇用する場合に必要となるのが就業規則ですが、労使間のトラブル回避・従業員のモラルの向上などの効果があり、なるべく早い段階から作成するほうが望ましいです。
会社の基本的な事項であり、不利益な変更になった場合にはトラブルのもとにもなることから、専門家と相談して慎重に作成することが望ましいといえるでしょう。
法律上は10名以上の従業員を雇用する場合に必要となるのが就業規則ですが、労使間のトラブル回避・従業員のモラルの向上などの効果があり、なるべく早い段階から作成するほうが望ましいです。
会社の基本的な事項であり、不利益な変更になった場合にはトラブルのもとにもなることから、専門家と相談して慎重に作成することが望ましいといえるでしょう。