【2025年法改正対応】中小企業向けテレワーク導入ガイド:労務リスクを防ぐ労働時間管理の全知識
更新日:2025/12/05
労務管理
テレワークは、インターネットやパソコンなどの情報通信機器を活用し、オフィスから離れた場所(自宅、コワーキングスペースなど)で仕事をする働き方です。これは、一人ひとりのライフスタイルに合った働き方を実現するための有効な選択肢であり、特に育児、介護、治療、障害といった多様な事情を抱える従業員にとって、仕事を継続する上で重要になります。
近年、テレワークは「柔軟な働き方」として一層推進されており、2025年4月・10月施行の育児・介護休業法の改正においても、テレワークを働き方の一つとする制度導入など、活用を促す動きが見られます。
しかし、導入に際しては、「労働時間の管理が難しい」「長時間労働になりやすい」といった課題も伴います。法令を遵守し、従業員の健康を守るためには、適切な労務管理が不可欠です。
本コラムでは、中小企業の経営者様、人事担当者様が、法改正の波に乗りつつ、労務リスクを回避しながらテレワークを円滑に導入・実施するための重要ポイントを、社会保険労務士の視点から解説します。
テレワークとは?法改正が推進する背景
テレワークの定義と効果
テレワークは、情報通信機器を利用してオフィス以外の場所で働くことを指します。これにより、通勤時間の削減や柔軟な働き方が可能となり、ワークライフバランスの実現や、多様な人材が能力を最大限に活かせる環境の整備につながります。
業種としては、情報通信、不動産、金融・保険など、一般的に就業場所を選ばない業務が多い業種で導入率が高くなっています。就業場所を選ばない業務(例:パソコン入力作業、資料作成、企画を思考する業務など)はテレワークに適しています。
育児・介護休業法改正との関連性
2025年4月・10月に施行される改正育児・介護休業法は、「共働き・共育て」や育児期の「柔軟な働き方」の推進を目的としており、テレワークはその柔軟な働き方を実現する選択肢の一つと位置づけられています。
法改正に伴う社内制度の整備のためにテレワーク導入を検討する場合、措置ごとにテレワークの要件が定められていることに留意が必要です。
テレワークにおける「労働時間」管理の基本原則
テレワークを行う従業員にも、労働基準法が適用されます。企業は労働時間を適正に把握し、適切に管理する責務があります。
労働時間の原則的な考え方
原則として、テレワークにおける労働時間は、通常の労働時間の考え方と同様です。労働時間とは、企業の指揮命令下に置かれている時間を指し、実際に業務を行っている時間だけでなく、それに付随する時間も含まれることがあります。労働時間に該当するかどうかの判断は、労働契約や就業規則等の定めによって決まるものではなく、個々の具体的な状況によって判断されます。
労働時間制度の適用
テレワークを導入した場合でも、通常の労働時間制のほか、変形労働時間制、事業場外労働のみなし労働時間制、裁量労働制など、さまざまな労働時間制度を適用することができます。
ただし、テレワークで事業場外みなし労働時間制を適用するには、以下の2つの要件をいずれも満たす場合に限られます。
①情報通信機器が、企業の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと
以下の場合はいずれも①を満たすと認められます。(情報通信機器を従業員が所持していることのみをもって、制度が適用されないことはありません。)
- 勤務時間中に、従業員が自分の意思で通信回線自体を切断することができる
- 勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、企業の指示は情報通信機器を用いて行われるが、従業員が情報通信機器から自分の意思で離れることができ、応答のタイミングについて従業員において判断する
- 企業が支給する携帯電話等を所持していても、その応答を行うか否か、または折り返しのタイミングについて従業員において判断できる
②随時企業の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと
以下の場合に②を満たすと認められます。
- 企業の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間帯)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時間、方法等を具体的に特定するものではない場合
導入必須!労働時間を適正に把握する具体的な方法
企業が労働時間を適正に把握するためには、客観的な記録による把握が原則となります。
客観的な記録による把握
客観的な記録による把握の方法として、「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として、始業・終業時刻を確認する方法」があります。テレワークにおける労働時間管理は、客観性を保ちつつ簡便に行うため、この原則を踏まえた方法をとることができます。
従業員の自己申告による把握
やむを得ず、自己申告制によらざるを得ない場合は、企業は特定の措置を講じる必要があります。
自己申告制を採用する場合、例えば、一日の終業時に始業・終業時刻をメール等で報告してもらうなど、労働時間を簡便に把握する方法が考えられます。
休憩、長時間労働対策、及び労災補償の重要ポイント
休憩の取り扱い
テレワークの場合も、休憩については通常の勤務と同じ原則が適用されます。休憩は一斉に与えることが原則ですが、テレワークでは一斉に休憩を与えることが難しい場合もあります。その場合、「一斉休憩の適用除外に関する労使協定書」を締結することにより、休憩の一斉付与を適用除外とすることができます。
また、育児や介護のために業務の途中で抜ける「中抜け」時間について、法令上、企業はこれを把握する義務はありませんが、就業規則等により中抜け時間の取り扱いについて定めておくことが大切です。
時間外労働・深夜労働
テレワークを行う場合でも、時間外労働や休日労働、深夜労働が発生した場合は、企業は割増賃金を支払う必要があります。
長時間労働の対策
テレワークは、仕事とプライベートの時間の区別が曖昧になりやすく、長時間労働になりやすいとも言われています。企業は、長時間労働を防ぐための手法を検討し、適切な対策を講じる必要があります。
また、企業はテレワークを行う従業員に対しても、法令に基づき安全と健康の確保のための措置を講じる必要があります。特にテレワークでは、従業員の心身の変調に気づきにくいという課題があるため、健康相談ができる体制整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましいとされています。
労災保険の適用
テレワークを行う従業員にも、労災保険法が適用されます。テレワークの就業場所がオフィスではない場合でも、労働契約に基づき事業主の命令を受けて業務を行っている場合は、事業主の支配下にあると考えられます。
そのため、事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、原則として業務災害として労災保険給付の対象となります(ただし、私的行為など業務以外が原因であるものは除きます)。
まとめ:適切なテレワーク導入で競争力を高める
テレワークの導入は、多様な人材の活用を促し、企業の競争力を高める重要な手段です。しかし、その効果を最大限に発揮するためには、労働時間管理の適正化や安全衛生面への配慮など、専門的な労務管理が欠かせません。
厚生労働省からは、テレワークの適切な導入および実施の推進のためのガイドラインが公表されており、適切な労務管理、労使双方の留意すべき点、望ましい取り組みなどが明示されています。
特に中小企業様においては、限られたリソースの中で、これらのガイドラインや法改正に対応した制度を構築することが大きな課題となり得ます。
テレワークを適切に導入し、法改正に対応するためには、就業規則への労働条件の明示(特に就業場所に関する事項)や、労働時間制度の選択、そして従業員の安全と健康を確保するための体制整備が必須です。
当社会保険労務士法人は、貴社の業種や業務形態に最適なテレワーク制度の設計、労働時間管理ルールの策定、就業規則の改定、そして従業員への周知・教育まで、一貫したサポートを提供いたします。
長時間労働のリスクを避け、優秀な人材が定着する柔軟な働き方を実現したい中小企業経営者様、人事担当者様は、ぜひ一度、当法人にご相談ください。
個別相談・お問い合わせはこちらから
厚生労働省からは、テレワークの適切な導入および実施の推進のためのガイドラインが公表されており、適切な労務管理、労使双方の留意すべき点、望ましい取り組みなどが明示されています。
特に中小企業様においては、限られたリソースの中で、これらのガイドラインや法改正に対応した制度を構築することが大きな課題となり得ます。
法令遵守とリスク回避は日本社会保険労務士法人にご相談ください
テレワークを適切に導入し、法改正に対応するためには、就業規則への労働条件の明示(特に就業場所に関する事項)や、労働時間制度の選択、そして従業員の安全と健康を確保するための体制整備が必須です。
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