【2025年度最低賃金改定】全国で時給1,000円超え!中小企業が今すぐ確認すべき3つの対応ポイント

更新日:2025/10/07

法改正

近年、働く人々のメンタルヘルス対策の重要性がますます高まっています。特に、長時間労働や職場のハラスメントなどが原因で精神的な不調を抱える労働者が増加している状況を踏まえ、労働安全衛生法等の改正が進められています。
これまで従業員数50人以上の事業場に義務付けられていたストレスチェック制度ですが、2025年5月に改正労働安全衛生法案が可決され、今後従業員数50人未満の事業場にも義務化される見通しとなりました。これは、多くの中小企業にとって、新たな対応が求められる重要な変更点です。
本コラムでは、中小企業におけるストレスチェック義務化について、その背景や制度の概要、企業が直面しうる課題、そして今から準備すべき対応策について、提供されたソースに基づいて詳しく解説します。


過去最高の引き上げ!2025年度の最低賃金改定



2025年度に向けて、地域別最低賃金の改定が答申され、その全国加重平均額は昨年度から66円増の1,121円となる見込みです。この66円という引上げ額は、目安制度が始まった1978年度以降で過去最高額となります。
この改定により、史上初めて全都道府県で時給が1,000円を超えることになります。最低賃金には、今回解説する「地域別最低賃金」のほかに、特定の産業で定められる「特定最低賃金」も存在します。
各都道府県の新しい最低賃金の発効日はそれぞれ異なるため、自社の事業所がある都道府県の発効日を必ず確認し、対応漏れがないよう注意が必要です。


知らないと危険?最低賃金制度の基本ルール



最低賃金制度は、国が法律に基づいて賃金の最低額を定め、企業に対してその金額以上の賃金を支払うことを義務付ける制度です。このルールは、正社員、パート、アルバイトといった雇用形態にかかわらず、すべての従業員に適用されます。
もし従業員との間で最低賃金額を下回る合意をしていたとしても、その部分は法律上無効となり、最低賃金額で契約したものとみなされます。万が一、最低賃金を下回る賃金しか支払っていない場合、50万円以下の罰金が科される可能性がありますので、確実な対応が求められます。


自社の給与は大丈夫?最低賃金の正しい計算方法



従業員の賃金が改定後の最低賃金を上回っているかを確認するには、まず「最低賃金の計算対象となる賃金」を正しく把握する必要があります。

最低賃金の計算に含める賃金・含めない賃金



最低賃金の計算対象となるのは、毎月決まって支払われる基本的な賃金(基本給や諸手当)です。 一方で、以下の手当は計算から除外する必要があります。


  • 結婚手当など、臨時的に支払われる賃金

  • 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金

  • 時間外労働手当(残業代)、休日労働手当、深夜労働手当

  • 精皆勤手当、通勤手当、家族手当



特に、残業代計算の基礎には含める「精皆勤手当」が最低賃金の計算では除外されたり、逆に残業代計算からは除外される「住宅手当」が最低賃金の計算には含まれたりと、混同しやすい部分があるため注意が必要です。
また、手当の名称ではなく、その実態で判断される点も重要です。例えば、通勤距離にかかわらず一律で支給している通勤手当などは、最低賃金の計算に含めて計算します。

1時間あたりの賃金の計算方法



時給や日給、月給など、給与形態に応じて時間給に換算し、地域の最低賃金の計算に含めて計算します。


  • 時給制の場合:時給額 ≧ 最低賃金額

  • 日給制の場合:日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額

  • 月給制の場合:月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額



基本給は日給制、資格手当は月給制など、複数の給与形態が組み合わさっている場合は、それぞれを時間額に換算し、合計した金額で比較する必要があります。



最低賃金改定に向けて企業が準備すべきこと



今回の改定を受けて、企業は以下の準備を進めることをお勧めします。


  • 従業員の賃金確認と見直し:全従業員の賃金を確認し、新しい最低賃金額を下回っている従業員がいないかチェックします。該当者がいる場合は、発効日までに賃金の見直し(引き上げ)を行う必要があります。

  • 人件費の増加額を試算する:賃金を引き上げると、それに伴い労働保険料(労災・雇用)や社会保険料(健康・厚生年金)の企業負担額も増加します。人件費全体でどの程度のコスト増になるのか、事前に試算しておくことが重要です。

  • 助成金や補助金の活用を検討する:厚生労働省は、賃金引き上げに取り組む中小企業を支援するため、「業務改善助成金」をはじめとする様々な支援策を用意しています。生産性向上に取り組みながら賃金を引き上げるための支援策を確認し、活用を検討しましょう




人事担当者が迷いやすい!最低賃金のQ&A



Q1. 最低賃金の発効日をまたいで勤務した場合、賃金計算はどうなりますか?



A. 発効日の午前0時を境に、新しい最低賃金が適用されます。
例えば、9月30日の21時から翌朝5時まで勤務し、10月1日が発効日の場合、9月30日の21時から24時までは改定前、10月1日の0時から5時までは改定後の最低賃金で計算する必要があります。

Q2. 複数の都道府県に事業所がある場合、どの最低賃金が適用されますか? 



A. 原則として、それぞれの事業所が所在する都道府県の最低賃金が適用されます。例えば、本社が大阪、支社が兵庫にある場合、兵庫の支社で働く従業員には兵庫県の最低賃金が適用されます。転勤などによって賃金が最低賃金を下回ることがないよう注意が必要です。


Q3. 学生アルバイトにも最低賃金は適用されますか?



A. はい、適用されます。
最低賃金は、年齢や雇用形態(パート、アルバイトなど)に関わらず、原則としてすべての労働者に適用されます。


Q4. 派遣社員の最低賃金は、派遣元と派遣先のどちらのものが適用されますか?



A. 派遣先企業の事業所が所在する都道府県の最低賃金が適用されます。
派遣元企業の所在地は関係ありません。


まとめ:法令遵守と適切な対応のために

毎年のように、最低賃金未払いなどの労働基準関係法令違反で企業名が公表される事例が発生しています。意図せず法令違反となってしまうことを避けるためにも、今回の記事を参考に、自社の賃金制度を改めて確認し、改定に向けた準備を早めに進めることが重要です。

賃金の再計算や就業規則の見直しなど、ご不明な点やご不安な点がございましたら、ぜひ専門家である社会保険労務士にご相談ください。

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