【2025年度版】労働保険の年度更新手続きガイド:申告期限・変更点・効率化のポイントを徹底解説
更新日:2025/06/16

近年、働く人々のメンタルヘルス対策の重要性がますます高まっています。特に、長時間労働や職場のハラスメントなどが原因で精神的な不調を抱える労働者が増加している状況を踏まえ、労働安全衛生法等の改正が進められています。
これまで従業員数50人以上の事業場に義務付けられていたストレスチェック制度ですが、2025年5月に改正労働安全衛生法案が可決され、今後従業員数50人未満の事業場にも義務化される見通しとなりました。これは、多くの中小企業にとって、新たな対応が求められる重要な変更点です。
本コラムでは、中小企業におけるストレスチェック義務化について、その背景や制度の概要、企業が直面しうる課題、そして今から準備すべき対応策について、提供されたソースに基づいて詳しく解説します。
労働保険の年度更新とは?
労働保険とは、労災保険と雇用保険の総称です。労働保険の年度更新とは、毎年6月1日から7月10日までの間に、前年度(4月1日~3月31日)に確定した賃金に基づいて労働保険料を計算し、これを申告・納付する一連の手続きを指します。同時に、新年度の概算保険料も申告・納付します。
この手続きは、従業員を雇用するすべての事業主に実施が義務付けられています。たとえ現在従業員が0人でも、今後雇用予定がある場合や、事業を廃止した場合でも対象となることがあります。
労働保険には「一元適用事業」と「二元適用事業」があり、それぞれ手続きや書類の封筒の色(緑色または青色)が異なります。一般的な事業の多くは一元適用事業に該当します。農林水産、土木建設、港湾運輸などの特定の事業は二元適用事業となります。
2025年度の申告・納付期間はいつまで?
2025年度の労働保険年度更新申告の受付は、2025年6月2日(月)から開始されます。
申告・納付の期限は、2025年7月10日(木)です。
厚生労働省からは、企業宛てに5月末から6月初旬にかけて、年度更新申告書や納付書が同封された緑色(または青色)の封筒が発送されます。この封筒が届いたら、内容を確認して手続きを進めましょう。
労働保険料の計算の基本
労働保険料は、原則として前年度(4月1日~3月31日)に従業員へ支払った賃金の総額に、事業の種類ごとに定められた保険料率を掛けて算出します。賃金の集計は月ごとに行います。集計する賃金は、集計期間の労働に対して支払いが確定した賃金です。
知っておきたい!2025年度の主な変更点
2025年度の年度更新における主な変更点や注意点があります。
- 雇用保険料率:2025年4月1日から2026年3月31日までの雇用保険料率は、前年度から引き下げられました。申告書の計算時には、この新しい料率を適用する必要があります。
- 労災保険率等:労災保険率は原則3年ごとの改定ですが、2024年4月に改定されたため、2025年度の労災保険率は前年度(2024年度)と同様です。建設事業の労務費率や第2種特別加入保険料率も同様です。
- 特別加入対象の追加:2024年6月11日より、特定フリーランス事業が労災保険の特別加入の対象に追加されました(区分番号 特12)。これに伴い、既存の区分番号に変更があるため注意が必要です。
- 一般拠出金率:2018年度以降改定はなく、業種を問わず一律「0.02 / 1,000」です。
- 申告書等の様式:年度更新申告書および算定基礎賃金集計表の様式は昨年度と同様です。ただし、前述の通り雇用保険料率が変更されているため、計算内容には十分な注意が必要です。
- 計算支援ツール:2025年度に対応した年度更新申告書計算支援ツールが厚生労働省から公開されています。Excel形式で、計算ミスの防止に役立ちます。
年度更新の対象となるのは誰?対象となる賃金は?
保険料計算の基礎となる賃金を集計するためには、まず労働保険の対象者を正しく把握することが重要です。労災保険と雇用保険で対象者が異なります。
- 労災保険の対象者:名称や雇用形態(正社員、パート、アルバイトなど)を問わず、労働の対償として賃金を受け取るすべての従業員が対象です。役員や事業主と同居の親族は原則対象外です。
- 雇用保険の対象者:すべての雇用保険被保険者が該当します。これには、原則として「1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上雇用される見込み」の従業員や、雇用保険に加入している兼務役員が含まれます。65歳以上の雇用保険マルチジョブホルダー制度による被保険者も対象です。
- 含める賃金の例:基本給、各種手当、賞与、通勤費(定期券)、休業手当など。
- 含めない賃金の例:慶弔見舞金、退職金、解雇予告手当、休業補償費、実費弁償的な費用など。
また、労働保険の対象となる「賃金」とは、労働の対償として支払われるすべてのものを指し、名称(基本給、手当、賞与など)は問いません。ただし、一部含まれないものがあります。
提出書類の確認ポイント
厚生労働省から送付される年度更新書類に同封されている申告書には、事業所の重要な情報が印字されています。手続きを始める前に、以下の点を必ず確認しましょう。
- 労働保険番号
- 申告済概算保険料額
- 各種区分
- 保険料率
- 口座振替の有無(申込完了時は「●口座振替●」と印字)
- 電子申請対象の有無(義務化対象企業は「●電子申請対象●」と印字)
- メリット制の有無(適用企業に印字)
もし、これらの登録情報と事業所で管理している情報が異なる場合は、封筒に記載されている管轄の都道府県労働局に問い合わせる必要があります。資本金1億円超の法人など、一定の要件を満たす企業は電子申請が義務化されています。
年度更新手続きを効率化するヒント
年度更新は毎年発生する手続きですが、以下の方法で効率化を図ることができます。
- 正確な給与計算:年度更新の基礎となる賃金集計は、毎月の給与計算が正確に行われていればスムーズです。給与計算ソフトの中には、年度更新用の賃金集計機能を備えたものもあります。
- 電子申請の活用:電子申請を利用すると、前年度情報の取り込みや入力チェック、自動計算機能が使え、記入漏れやミスの防止に役立ちます。また、労働局や労働基準監督署の窓口に出向く手間が省けます。
- 保険料の口座振替:口座振替は手数料がかかりません。金融機関の窓口に行く手間や待ち時間がなくなり、納付漏れやそれに伴う延滞金の心配を防げます。納付期限についても、納付書よりも最大2ヶ月の猶予ができます。ゆうちょ銀行も2024年度より対象金融機関に加わっています。ただし、2025年度の全期または第1期の申込は終了しています。第2期の口座振替を希望する場合は、2025年8月14日までに金融機関で手続きが必要です。
特定の建設事業(水力発電施設、ずい道等新設事業)において、2018年4月1日から2021年1月31日の間に開始した元請工事がある場合、申告済の保険料額に変更が出る可能性があるため、該当する場合は管轄労働局へ確認が必要です。
まとめ:計画的な準備を

労働保険の年度更新は、すべての企業が毎年行うべき重要な手続きです。申告期限の7月10日は納付期限でもあります。期限を過ぎると延滞金が発生することもあるため、計画的に準備を進めましょう。もし納付が難しい場合は、管轄の労働局または労働基準監督署に早めに相談することをお勧めします。
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