【2025年法改正対応】中小企業(50人未満)のストレスチェック義務化とは?いつから?どう対応する?
更新日:2025/06/16

近年、働く人々のメンタルヘルス対策の重要性がますます高まっています。特に、長時間労働や職場のハラスメントなどが原因で精神的な不調を抱える労働者が増加している状況を踏まえ、労働安全衛生法等の改正が進められています。
これまで従業員数50人以上の事業場に義務付けられていたストレスチェック制度ですが、2025年5月に改正労働安全衛生法案が可決され、今後従業員数50人未満の事業場にも義務化される見通しとなりました。これは、多くの中小企業にとって、新たな対応が求められる重要な変更点です。
本コラムでは、中小企業におけるストレスチェック義務化について、その背景や制度の概要、企業が直面しうる課題、そして今から準備すべき対応策について、詳しく解説します。
なぜ中小企業もストレスチェックが義務化されるのか?
ストレスチェック制度は、2015年12月から従業員数50人以上の事業場に実施が義務付けられていましたが、50人未満の事業場については努力義務とされていました。
しかし、近年、精神障害による労災認定件数の増加 や、長時間労働、パワーハラスメントなどを背景とするメンタルヘルス不調者が増加 しています。こうした状況を受け、労働者のメンタルヘルス対策をさらに強化するため、企業規模に関わらずすべての事業場においてストレスチェックの実施が義務化される見通しとなったのです。
2025年5月に改正労働安全衛生法案が可決されたことにより、今後、従業員数50人未満の事業場への導入が2028年まで段階的に進められることとなります。
ストレスチェック制度の基本をおさらい
義務化に備える前に、改めてストレスチェック制度の基本を確認しておきましょう。
ストレスチェックは、労働者の心理的な負担の状況を把握する目的で、年1回以上実施することが労働安全衛生法で義務付けられている制度です(現在は50人以上の事業場が対象)。
- 実施方法: 医師・保健師などの専門職が実施者となり、労働者は質問票(質問項目例は後述)に回答します。
- 結果の通知: ストレスチェックの結果は本人に直接通知されます。事業者が本人の同意なく結果を入手することはできません。
- 高ストレス者への対応: 結果、高ストレスと判定された労働者が希望した場合は、医師との面接指導を実施する必要があります。面接指導の結果に基づき、必要に応じて職場環境の改善措置を講じることも求められます。
質問票の主な項目例としては、以下の4つの領域に関するものがあります。
- 【仕事の負担・量】(例:仕事の量が多すぎると感じる、時間内に仕事を終えるのが難しい)
- 【職場の人間関係】(例:上司から十分に支援を受けている、職場で孤立していると感じる)
- 【仕事のやりがい】(例:自分の仕事に満足している、仕事が社会に役立っていると感じる)
- 【身体・精神の反応】(例:最近、眠れないことがある、気分が落ち込む日が多い)
中小企業が直面しうるストレスチェック導入・運用の課題
ストレスチェック義務化は従業員の健康管理上非常に重要ですが、中小企業にとっては導入・運用においていくつかの課題が懸念されています。
実施コストとリソースの負担
ストレスチェックの実施には、医師や保健師などの専門職による実施体制が必要です。産業医が配置されていない多くの中小企業では、外部委託が前提となり、費用負担や事務負担が重くなる点が懸念されます。また、実施後の高ストレス者への対応として配置転換などを検討する場合でも、人手が十分でないために対応が難しいといった問題も予想されます。
個人情報保護の難しさ
中小規模の事業場では、従業員数が少ないため、ストレスチェックの結果から個人が特定されやすくなるという問題があります。例えば、「高ストレス者が1人」と判定された場合、誰であるかが容易に推察されてしまう環境も少なくありません。このような状況下で、産業医面談の勧奨や職場環境改善を進めようとすると、プライバシーの侵害や人間関係の悪化につながるリスクがあり、結果として制度そのものが運用しづらくなる可能性が指摘されています。
義務化に向けて企業が今から準備すべきこと
2028年までの段階的な導入 とはいえ、義務化される見通しである以上、中小企業も早めに準備を始めることが賢明です。
- 制度の理解と情報収集: まずは、ストレスチェック制度の目的や流れ、企業に求められる役割について正しく理解することが第一歩です。厚生労働省のWebサイトなどで情報収集を行いましょう。
- 実施体制の検討: 自社で実施するのか、外部機関に委託するのか、体制をどのように構築するかを検討します。外部委託の場合は、信頼できる専門機関を選定する必要があります。
- 就業規則等の確認・改定: ストレスチェックに関する事項を就業規則や安全衛生規程等に盛り込む必要があるか確認し、必要に応じて改定の準備を進めます。
- 従業員への周知と説明: 従業員に制度の目的や流れ、個人情報の取り扱いなどについて事前にしっかりと周知・説明し、制度への理解と協力を得られるように努めます。
- 普段からの職場環境への意識: 制度によるチェックだけでなく、日頃から管理者が従業員の様子を観察し、変化(身だしなみの乱れ、遅刻の増加など)に早期に気づき、気軽に声かけができるようなコミュニケーションを取りやすい職場環境づくりも非常に重要です。
まとめ:適切な対応のために専門家へ相談を
2025年5月に法案が可決され、従業員数50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化される見通しとなりました。2028年までの段階的な導入 に向けて、中小企業も準備を進める必要があります。
制度導入・運用には、コストや個人情報保護など特有の課題 もありますが、従業員のメンタルヘルスを守り、安心して働ける環境を整備するためには不可欠な取り組みです。
「何から始めたら良いか分からない」「自社に合った体制をどう構築すれば良いか」「個人情報の取り扱いに不安がある」など、ご不明な点や懸念がある場合は、専門家である社労士に相談することをお勧めします。

ストレスチェック義務化への対応でお困りではありませんか?
当事務所では、中小企業の皆さまのストレスチェック制度導入・運用をサポートしております。法改正内容を踏まえた規程整備のアドバイス、外部委託先選びの相談、従業員への説明サポート、実施後の対応に関するご助言など、貴社の状況に応じたきめ細やかな支援が可能です。
従業員の健康管理体制を整備し、より働きやすい職場環境を作るために、ぜひ当事務所の専門知識をご活用ください。
今回のストレスチェック義務化に関するご質問はもちろん、労務管理全般についてもお気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちらから
