就業規則の不利益変更をする場合の手続きについて解説

更新日:2024/1/30

会社における基本的ルールである就業規則も、ケースによっては変更する必要があります。 この就業規則を会社側が、労働者にとって不利益になるように一方的に変更することは原則として禁止されていますが、経営状態が良くないなどでどうしても変更する必要がある場合があります。 そこで、どのような場合に不利益変更が認められているのでしょうか。 このページでは、就業規則の不利益変更についてお伝えします。

就業規則の不利益変更についての法律の規定

就業規則の不利益変更について、法律ではどのような規定が置かれているのでしょうか。

就業規則の不利益変更の原則(労働契約法9条)

給与を引き下げる・各種手当をカットする・福利厚生を廃止するなどの、就業規則の不利益変更について、労働契約法9条の本文では次のように定めています。
「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。」
就業規則は会社と労働者の間の基本的なルールであり、一方的に変更できるとすると、当初合意の上で行った労働契約の内容を一方的に変更できるということです。特に不利益に変更することを認めるのは、労働者の保護をするための労働基準法の観点からは好ましくありません。
そのため、労働基準法9条は、原則として就業規則の不利益変更を禁じています。

就業規則を例外的に不利益に変更できる場合(労働契約法9条但書・10条)

しかし、会社の経営状況が悪化するなどで、そのままの給与水準・福利厚生を維持するのは難しいこともあります。
そのため、労働契約法9条但書・10条で、就業規則の変更が合理的である場合には不利益に変更することが認められています。
就業規則の変更が合理的であるといえるかどうかは次のような事情をもとに判断されます。

  労働者の受ける不利益の程度
  労働条件の変更の必要性
  変更後の就業規則の内容の相当性
  労働組合等との交渉の状況
  その他の就業規則の変更に係る事情

たとえ、労働者が受ける不利益の程度が小さい場合でも、変更の必要性がない、労働組合との交渉を行っていないという場合には、就業規則の不利益変更は認められないということになります。
就業規則の不利益変更が是認されるかどうかについてはケースバイケースとなるので、必ず専門家に相談しながら行うようにしましょう。
合理性が認められない場合、就業規則の変更が無効である場合、たとえば給与を引き下げた場合には、その差額の支払いをしなければならないので、注意が必要です。

就業規則の不利益変更をしたら周知を行う

労働契約法10条は、就業規則を不利益に変更した後には、変更した内容を周知するように規定しています。
周知をすることは労働契約法10条が規定している就業規則の不利益変更の要件でもあり、周知をしないことで不利益変更が無効となる可能性もあります。
労働者負担雇用主負担雇用保険料率
一般の事業5/10008.5/100013.5/1000
農林水産・清酒製造の事業6/10009.5/100015.5/1000
建設の事業6/100010.5/100016.5/1000

就業規則を不利益に変更した場合には変更に同意しない社員にも適用

就業規則を適法に不利益に変更した場合、変更に同意しない社員にも適用がされます。
就業規則の不利益変更は、必ずしも労働者全員の同意を必要としません。
そのため、変更に同意しない社員もいるのですが、就業規則の不利益変更は同意をしていない社員にも適用されます。
法律的には合法ですが、同意しない労働者の働くモチベーションへの影響は避けられないので、同意をしない場合でも、不利益変更の必要性を丁寧に説明すべきでしょう。

キャリアアップ助成金で得られる給付金の額

キャリアアップ助成金で得られる給付金の額は次の通りです。

  正社員化コース:有期社員を正規社員にした場合の57万円
  障害者正社員化コース:有期社員を正規社員にした場合90万円
  賃金規定等改定コース:5%以上の基本給の増額をした場合:5万円/1人
  賃金規定等共通化コース:1事業所あたり60万円
  賞与・退職金制度導入コース:1事業所あたり40万円
  短時間労働者労働時間延長コース:1事業所あたり7万円(3時間以上延長)


上記の給付金額は一例であり、中小企業か大企業かなど、条件によって異なりますので、詳細は別途確認してください。

労災保険

業務や通勤が原因の怪我・病気に対して給付を行う制度が労災保険です。
怪我や病気の治療に必要な費用を支給する療養給付、仕事を休んだことに対して給付を行う休業給付、怪我や病気で後遺障害が残った場合の障害給付、遺族に対する遺族給付などを受けることができます。

社会保険は狭義の社会保険と労働保険に分類される

社会保険は、健康保険・厚生年金・介護保険の3つを合わせて狭義の社会保険と、雇用保険と労災保険のことを労働保険と呼んで分類することがあります。

記載事項についての解説

就業規則に記載する事項について、特に注意すべき点は次の通りです。

必要的記載事項は全項目記載する


就業規則において必ず記載しなければならない事項のことを必要的記載事項と呼んでいます。

始業時刻・終業時刻
休憩時間・休日・休暇
労働者を2組以上に分けて交代に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
賃金の決定・計算・支払方法
賃金の締め切り及び支払いの時期
昇給に関する事項
退職に関する事項
退職手当を定める場合に、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算、支払い方法、支払い時期に関する事項

これらの事項が記載されていない就業規則を作成しても、労働基準法89条に規定されている就業規則を作成したといえないことになるので、必ず記載します。
モデル就業規則にはこれらを踏まえて多数記載がされています。
例えば、20条は次のような項目が記載されています。
(休日)
第20条 休日は、次のとおりとする。
①土曜日及び日曜日

②国民の祝日(日曜日と重なったときは翌日)

③年末年始(12月  日~1月  日)

④夏季休日(  月  日~  月  日)

⑤その他会社が指定する日

2.業務の都合により会社が必要と認める場合は、あらかじめ前項の休日を他の日と振り替えることがある。


土日祝日を休みとする会社の記載例です。
年末年始・夏季休日については、会社の実情に応じて記載します。
普段は土日祝日ですが、土日祝日に勤務が必要になることに備えて、2項のように休日の振り替えについての記載を置くようにします。

会社の事情に応じて相対的記載事項を記載する


絶対的記載事項のほかに、特定の取り決めをする際には記載しておかなければならない事項のことを相対的記載事項といいます。
主な相対的記載事項には次のものがあります。


臨時の賃金等及び最低賃金額の定めをする場合にはこれに関する事項
労働者に食費・作業用品その他の負担をさせる場合にはこれに関する事項
安全・衛生に関する定めをする場合にはこれに関する事項
職業訓練に関する定めをする場合にはこれに関する事項
災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合にはこれに関する事項
表彰及び制裁の定めをする場合にはその種類及び程度に関する事項
当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合にはこれに関する事項

会社でこれらの定めをする場合には、就業規則に記載するようにしましょう。
安全・衛生についての定め、災害補償や業務外の疾病扶助、従業員に懲戒処分をするための制裁の定めはほとんどの就業規則で記載されるので、モデル就業規則を参考に自社の事情に合わせていた記載を行いましょう。
例えば、モデル就業規則67条は次のように定めています。
(懲戒の種類)
第67条 会社は、労働者が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
②減給
始末書を提出させて減給する。ただし、減給は1回の額が平均賃金の1日分の5割を超えることはなく、また、総額が1賃金支払期における賃金総額の1割を超えることはない。
③出勤停止
始末書を提出させるほか、  日間を限度として出勤を停止し、その間の賃金は支給しない。
④懲戒解雇
予告期間を設けることなく即時に解雇する。
この場合において、所轄の労働基準監督署長の認定を受けたときは、解雇予告手当(平均賃金の30日分)を支給しない。

上記の制裁に関する定めを具体化したもので、就業規則で定めた懲戒処分によって、従業員の行為に対する制裁を行うことになります。

その他の任意的記載事項


任意的記載事項とは、絶対的記載事項および相対的記載事項以外の事項の記載のことをいいます。
就業規則は会社と従業員の関係の基本的な事項を記載するものになるので、就業規則の中で必要的記載事項・相対的記載事項以外でも、基本的なルールとして記載すべきといえるものについては、就業規則に記載します。
主な任意的記載事項としては、次のようなものがあります。

就業規則の基本精神
応募・採用に関する事項
副業・兼業・競業に関する事項

モデル就業規則でも記載があるので、自社の事情に応じて記載をしましょう。
例えば、モデル就業規則70条は次のような規定を置いています。

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。
2.会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。
①労務提供上の支障がある場合
②企業秘密が漏洩する場合
③会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④競業により、企業の利益を害する場合

この規定は、副業・兼業について会社への届出によって認めつつ、秘密漏洩や競業に関するものについては一定の場合には禁止・制限をするものです。

就業規則の不利益変更の注意点

就業規則を不利益に変更する場合の注意点としてはどのようなことがあるでしょうか。

労働者には不利益変更をきちんと説明する

労働者には不利益変更をきちんと説明するようにしましょう。
どんなに不利益変更の必要性があるとしても、労働組合や個々の労働者への説明を適切に行わなければ変更が違法となる可能性があります。
また、不利益変更が適法である場合でも、上述したように合意しない・合意をしても納得がいかない労働者にとっては、仕事に対してのモチベーションに大きく関わります。
労働者には不利益変更についてきちんと説明し、納得をしてもらうようにしましょう。

就業規則の不利益変更の同意を得た労働者からは同意書面を取得しておく

就業規則の不利益変更の同意を得た労働者からは、同意書面を取得しておきましょう。
口頭で同意を得ただけでは、就業規則の不利益変更後に同意をしていないと主張される可能性は否定できません。
その結果、労働者が合意していないにも関わらず就業規則を不利益変更したと評価され、違法となってしまうことがあります。
同意書面をきちんと取得しておきましょう。

賃金・退職金を引き下げる場合には経営資料に基づく説明を行う

不利益変更の中でも、特に賃金・退職金を引き下げる場合には経営資料に基づいて説明をしましょう。
賃金・退職金を引き下げることは労働者の生活に直結するため、大きな不満に繋がります。
納得をしてもらうためには、説明の起訴となる経営資料を可能な限り示して、やむにやまれぬ措置であることを納得してもらいましょう。

休日を減少させる場合の注意

休日を減少させる場合には、同業他社との違いを意識しましょう。
休日を減少させるということは、同じ月給で働く場合には、実質的には給与の減額であり、勤務日数が増えることになるので不満も多いです。
このときに同業他社よりも休日が少なくなるということになるので、給与の減額ではだめなのか、休日を減らして稼働を増やす必要性について、同業他社との比較で説明できるようにしましょう。

賃金の該当種類に注意


労働保険の年度更新における注意点の一つは賃金の該当種類についてです。
給与・賃金として支給されるものには、各種の手当などと合わせて様々な種類のものがあります。
そして、給与として支払われる金銭の中には、労働保険において支給された給与・賃金には含まないものがあるので注意が必要です。
給与・賞与・通勤手当のようなものについては、賃金として計算に含まれます。

しかし、役員報酬・傷病手当金・災害見舞金・解雇予告手当などは、賃金として計算に含みません。
また、労働者が立て替えていた交通費・出張旅費・宿泊費の支給も、賃金には含まれません。
支給した額をそのまま申告してしまい、これらを給与に含めてしまうと、保険料を多く支払ってしまうことになるので、注意が必要です。

65歳以上の人を雇用している場合


65歳以上の人を雇用している場合も注意が必要です。
2017年までは65歳以上の人は雇用保険の適用対象ではありませんでした。
そして、2017年からは65歳以上も雇用保険の適用対象となっていましたが、2020年3月31日までは雇用保険料は免除されていました。
2020年4月1日からは、65歳以上の高齢者も雇用保険に加入し、雇用保険料の支払いが必要となります。
最新の情報を確認して手続きを行うようにしてください。

特定の労働者に不利益が偏る場合の注意点

就業規則を不利益に変更した結果、特定の労働者に不利益が偏ることがあります。
当然ですが、不利益が偏る労働者としては不満が大きくなるので、モチベーションの低下・退職へと繋がります。
丁寧な説明はもちろんですが、特別な手当で不利益を緩和しなければ合理性が認められなくなることがあります。
三晃印刷事件(東京高等裁判所平成24年12月26日判決)にあるように、3年分の調整手当が合理性を肯定する目安となります。

36協定違反にもペナルティがある

36協定に関する違反をした場合にもペナルティがあります。
上述の行政指導はもちろん、労働基準法119条1号で労働基準法36条6項に違反した場合の刑事罰も同様に定められています。
労働時間に関する会社名で報道されているものの多くが、36協定に違反しての長時間残業なので、やはり違反をしないように細心の注意が必要であるといえます。

就業規則の不利益変更をスムーズに行うコツ

就業規則の不利益変更をスムーズに行うコツとしてはどのようなものがあるのでしょうか。

労働者の合意が得られない場合

就業規則の不利益変更については、労働者の合意が得られないことも多いです。
労働組合・労働者の合意を最終的に得られないからといって、交渉を諦めてしまうと、合理性が認められなくなってしまう可能性もあります。
就業規則の不利益変更をするにあたって、労働者の合意が得られない場合でも、粘り強く交渉し、労働者への配慮を最大限行ったといえるようにしましょう。

経過措置を設けて負担を軽減することも検討する

経過措置を設けて労働者の負担を軽減することも検討しましょう。
特に、不利益変更の程度が大きい場合、労働者の生活への影響も大きく、合理性が認められるためのハードルが非常に大きくなります。
最終的な変更内容を定めてみた段階で、労働者の生活に大きな影響を与えるくらいに不利益変更の程度が大きい場合には、経過措置を設けて、労働者の心理的負担を和らげるようにしましょう。

支給申請をする

キャリアアップ助成金の支給申請を行います。
上述した正社員化コースのように支給申請について期間があるので、いつからいつまで請求できるのかはしっかり調べておくのが望ましいといえます。

審査・支給

申請された書類に基づいて審査が行われます。
審査内容はもちろん、労働基準法違反や計算間違いなどについても厳しくチェックされるので注意が必要です。
審査の結果、支給ができるとなると、キャリアアップ助成金の支給決定の通知書が交付され、事業主が指定した口座に助成金が振り込まれます。

まとめ

このページでは、就業規則の不利益変更についてお伝えしました。
就業規則の不利益変更は原則的に禁止されていますが、例外的に認められる場合もあります。
例外要件の認定は非常に厳しいので、専門家に相談しながら行うようにしましょう。

電子申請を行うメリット

労働保険の年度更新について、インターネットで申請を行う電子申請には、次のようなメリットがあります。


各種機関に直接出向く必要がない
自宅やオフィスからいつでも手続きが可能


まず、上述したように、申告書を紙で提出する場合、直接労働基準監督署などの機関に出向いて手続きをする必要があります。
電子申請の場合、直接出向く必要はありません。
また、申告書を紙で提出する場合、各種機関の窓口が稼働している時間に出向く必要があります。
しかし、電子申請であれば、自宅やオフィスから24時間いつでも行なえます。
移動時間や費用を節約することが可能といえます。

電子申請に必要なもの

労働保険の年度更新の電子申請に必要なものには次の3つがあります。


パソコン
電子証明書
e-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントとアプリケーションのインストール


まず、電子申請はパソコンで使用するアプリが必要となるので、パソコンが必要です。
インターネットが利用できてもスマートフォン・タブレットでは電子申請はできませんので注意が必要です。
次に、労働保険の年度更新には電子証明書が必要です。
電子証明書とは、電子申請をする際に送信する電子データが原本であること・改ざんされていないことを証明するためにつけられるものです。
電子証明書は認証局で作成しますが、e-Govを利用するにあたって動作確認がとれている電子証明書の認証局は、次のe-Govのホームページに公開されています。

参考:
認証局のご案内|e-Gov(URL:https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/preparation/certificate/certification-authority.html

さらに、e-Govのアカウントを取得した上で、パソコンにアプリケーションをインストールする必要があります。
アプリケーションはWindows・Macどちらにも対応しています。

電子申請の手続

労働保険の年度更新を電子申請で行う場合の手続きは次の通りです。

賃金集計表を作成する


紙で行う場合と同様に賃金集計表を作成します。

e-Gov電子申請手続検索を利用して「労働保険年度更新申告」を検索する


e-Govの電子申請はとてもたくさんの種類があります。
労働保険の年度更新の手続きのページには、手続検索から「労働保険年度更新申告」と検索すると遷移することができます。

申請書入力画面に必要事項を入力


労働保険年度更新申告の申請書入力画面に必要事項を入力します。
入力したデータと電子証明書を保管します。

保管したデータを送信


保管したデータと電子証明書の送信を行います。

保険料を納付する


送信が終わると保険料の納付に必要な情報が表示されるので、保険料の納付を行います。

市販の電子申請ソフトや労務管理システムで電子申請を行うことも可能

e-Govは外部連携APIを公開しているので、これを使って申請ができる電子申請ソフトや労務管理システムが市販されています。
これらを用いて労働保険の年度更新をすることも可能です。

まとめ

このページでは労働保険の年度更新についてお伝えしました。
労働者を雇用していると手続きが必要となる労働保険は年度更新が必要で、適切に行わなければペナルティを課せられることもあります。
適切に行えるよう不明点がある場合には専門家に相談するようにしましょう。
助成金に関するお問い合わせ・無料相談 03-6831-3778

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